第三帝国高官8人の子供達。敗戦後、彼らは自分の名を告げるだけで周囲に激しい反応を引き起こす“ナチの子供”としての人生を歩む。ゲーリングの娘が父を崇拝し無実を信じ続けた一方で、その甥の子供達は家系を断つために断種手術を選んだ。アウシュヴィッツ所長ヘースの娘は名を隠し、“クラクフの虐殺者”フランクの息子は父を憎み、メンゲレの息子は逃亡中の父と対決する。子供の罪ではない。だが彼らは親の「おぞましい遺産」を生涯背負う。戦争が過去のものとなることなどなく、常に語られることを必要としている、と改めて思った。
ヘースの娘ブリギッテは7~11歳までアウシュヴィッツで暮らしたが、縞模様の囚人服を着た使用人が作った美しい庭で遊び「アウシュヴィッツは天国みたいだった」と語っている。またフランクの息子ニクラスは、ユダヤ人が作る「最高のコルセット」を買いに行く母とともに、死体が転がるゲットーへ行った時の記憶を語る。彼らが豊かで安全な子供時代を享受していたとき、すぐそばには地獄があった。成長してそのグロテスクな事実を理解した時、彼らがどれほどの衝撃を受けたろうかと思ってしまう。(2016)
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2019年8月28日
- 読了日 : 2018年3月25日
- 本棚登録日 : 2019年8月28日
みんなの感想をみる