モンキーズ・レインコート (新潮文庫 ク 11-1)

  • 新潮社 (1989年2月1日発売)
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感想 : 7
3

1988年アンソニー賞受賞
原題は『The Monkey's Raincoat』
芭蕉の句「初しぐれ、猿も小蓑を欲しげなリ(Winter downpour, even the monkey needs a raincoat)」から流用

私立探偵のエルヴィス・コールは、エレン・ラングから失踪父子の捜索を依頼される。
夫のモートンが息子のペリーを学校に迎えに行ったあと、二人とも消息を絶っていた。

モートンの愛人だというキンバリー・マーシュは不在で、褐色の大男が訪ねてきたという。
その夜、ラング邸の室内が破壊され、物色されたが、ドアも窓もこじ開けられた形跡はなかった。
プロの仕業とみられたが、エレンは夫の仕業だと被害届を出さなかった。
なにもかも夫任せのエレンは、ひとりで小切手をきることもできなかった。
「逆境は力の源泉だ」とコールは言う。彼はヴェトナムで気楽に生きることが生き延びる秘訣だと知り、心を正常に保つためにヨガや東洋武術を学んだ。
「エレンも生き延びる方法を学ばねばならない」と語った。

翌日、モートンの射殺死体が発見された。
さらに、エレンが行方不明になり、スーパーマーケットの駐車場で彼女の車が発見された。

コールはキンバリーの隠れ家をみつけた。
彼女はモートンに誘われてドムというメキシコ人の家で開かれたパーティに出席した。
そこで、モートンはドムと恋の鞘当をし、怒ってキンバリーと一緒に立ち去った。
翌日、モートンから電話があり、誰がきてもドアをあけないように言われたという。


<解決編>

相棒のジョー・パイクは、キンバリーの部屋を見張っていたメキシコ人を尾行し、元闘牛士の実業家ドミンゴ・ガルシア・デュラーンの屋敷にたどりついた。
一方、コールは褐色の大男にデュラーン邸に連れて行かれる。
デュラーンは、モートンがコカインを盗み、それをコールが持っていると思ったのだ。

コールはデュラーンの部下の車を尾行し、捕えられていたエレンを救出する。
そしてペリーを救出するため、ポイトラス刑事に援助を求めるが、特捜部捜査官オバノンから捜査をやめなければ私立探偵のライセンスを取り消すと言われる。
パイクはエレンの護衛をしつつ、彼女に銃の撃ち方を教えた。
パイクはヴェトナム帰りのプロの兵士で、肩の矢の入れ墨には生きて行く指針である<後退するな>という意味があった。
それを聞き、エレンは「もう過去のわたしに戻れないということね」とつぶやいた。

コールは麻薬の売人から、コカインを売ろうとしていた男がいたと聞く。
それはキンバリーのボーイフレンドのラリーだった。
コールは、キンバリーがデュラーン邸のパーティーでコカインを盗み、窓から放り投げ、それをラリーが持ち去ったと知る。
コカインを手に入れるとデュラーンに連絡し、明日、グリフィス・パークのトンネルの入り口で会うことにした。
エレンがコカインを持参することを条件に、ペリーを解放するという。

先回りして公園を見張っていると、デュラーンの部下の車が5台、周囲に配置された。
リムジンの中には子供はいなかった。
デュラーンに子供の居場所を聞き出すために、屋敷に向かう。

屋敷にはアリゾナのギャングのボス、ルディ・ガンビーノとその部下がいた。
コールとパイクはペリーの姿を認め、母屋に忍び込む。
パイクは胸を撃たれるが、「俺にかまうな、子供を助けに行け」という。
デュラーンの部屋では、ガンビーノと麻薬の取引が行われていた。

そこへ大男が現れ、コールは拳銃を奪われ、殴られる。
ガンビーノが拳銃を構えたとき、銃声がして、彼の身体が弾き飛ばされた。
エレンが戸口に立っていて、発砲したのだ。
コールが大男と格闘している間に、デュラーンが剣をかまえて、エレンの方に向かって行った。
エレンはデュラーンが倒れるまで銃を撃ち続けた。その顔にはためらいもおびえもなかった。
コールは肩を撃たれ、助骨を折られながらも大男を倒し、ペリーを探そうと起き上がったとき、男たちがやってきた。
そのなかにオバノンの姿を確認し、気絶した。

ペリーは無事救出された。
パイクは手術し、容態は安定していた。
FBIはデュラーンとガンビーノが取引をするという情報をつかみ見張っていたのだが、二人を刑事だと思い、エレンが入るまで突入しなかったのだという。
コールはエレンに「モートンは、ペリーを連れ去られたので追いかけて行った。自分の息子の命を救うために死んだのだ」と告げた。
そして、パイクの待つ病院に向かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年2月25日
読了日 : 2013年2月25日
本棚登録日 : 2013年2月21日

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