こちら『ランドリー新聞』編集部 (世界の子どもライブラリー)

  • 講談社 (2002年2月20日発売)
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本棚登録 : 182
感想 : 17

タイムリーにも(というかちょっと遅いかもだけど)言論・出版の自由を扱った物語ということで、児童書だからといわずに大人も読んで得るところ多い本ではあるけれど、それが真っ向から扱われるのは後半で、前半はカーラとラーソン先生というふたりの人間の出会いと成長の物語になっていて、そこがけっこう好き。

「人を怒らせるために」真実を突きつけて憂さ晴らしをしていた新聞作りが趣味の少女カーラに、子供たちを自発的に学ばせる善い指導者からいつの間にか怠惰な放任主義の教師に成り下がっていたラーソン先生。正しい気持ちが行き場を見失っているという点では共通しているこのふたりが出会ったことでラーソン先生の授業は生気を取り戻す。この「間違っているときのふたり」に思い当たるところのある大人も少なくないのではないかと。

カーラの新聞がみんなでつくる学級新聞になり、それからそれが原因である事件が起こると、ラーソン先生はトラブルをクラスの子供たちの生きた教材にしようと、危機に瀕している自身の立場も省みず奮闘する。そういう中で、言論・出版の自由を保障する有名な米国憲法の「修正第一条」が出てくるわけだけど、当事者、利害関係のある人たち、考えなければいけないこと等々、いちいち具体的に話が進んでいく書きぶりに、ともすれば理想論扱いされがちな言論の自由をめぐる日本国内での議論とは違う、地に足の着いた展開を見て新鮮だった(し、勉強になった)。最終的に言論・出版の自由を担保してるのはみんなの良心でしょ、という明るい確信が感じられるのも米国らしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年12月2日
読了日 : 2013年12月2日
本棚登録日 : 2013年10月23日

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