さよなら、ニッポン

著者 :
  • 文藝春秋 (2011年2月19日発売)
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感想 : 12
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ニッポンのこれからの文学、に挑戦し続ける作者の文学論。

リアルタイムに、正確には文學界に月一回連載する中で、その都度考えていた思索の軌跡を追うことが出来る。

小説を評論するには全文引用した後で、細かく解読し、さらにそれを元に小説を一本書き上げるべきだ、という話や、回を重ねる事に別の話題へ写って行き当初のテキストが表向き登場しなかったり。実験的な文体や構成も高橋源一郎さんらしい。

けれどこの実験しながらの思索の連載が、日本近代文学と、現代文学の間を繋げる文脈を探すための戦いの歴史のようにも読み取れる。

そのように歴史を作る事で、高橋さん自身の小説をネクストステージに上げるという目的はもちろん、今の人々の心の位置づけを探ってもがいているようにも見える。

実験的な芸術は諦観や否定、虚無、反発から始まり、文脈の否定や断絶に繋がることが多い。けれど、日本文学の文脈の中で実験的な文体に挑戦してきた高橋さんだからこそ、その断絶の歴史を繋げたいという意思を強く感じた。その大きな歴史の中に小説が位置することこそ、より人の心に刺さる小説が生まれる、生み出す事と信じているのではないか。そういう勇気をくれます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年3月29日
読了日 : 2011年3月29日
本棚登録日 : 2011年3月29日

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