知性の限界――不可測性・不確実性・不可知性 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2010年4月16日発売)
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科学哲学の大家 高橋昌一郎氏の限界シリーズ

前著 理性の限界の前振りから

選択の限界 グー・チョキ・パーの三つ巴の状態では、二者選択の残りが勝者となることがある
科学の限界 科学者が不可能を言ったものも、のちに撤回されて実現されている
知識の限界 ゲーデルの不完全性定理、数学、論理学自体に矛盾を含んでいて、じつは不完全である。

言葉は不完全なので、科学的なやり方に従って世界を実証しようがテーマ

気になったこと

・ヴィトゲンシュタインは、過去の「哲学的問題」は「言語的問題」にすぎない
 言語そのものが不明瞭なものであるので、哲学、美学で取り上げられてきた問題は実は問題と呼べない

・ヴィトゲンシュタインの結論 語りえないことについては、沈黙しなければならない

・『論理哲学論考』には、語ることができないにもかかわらず、「語りえないこと」があると認めている。

・ウィーン学団は、ヴィトゲンシュタインのスローガンをさらに進めて、世界を論理によって分析し、科学によって実証して認識しようとする「科学的世界把握」の立場を掲げました。

しかし、ゲーデルは、不完全性定理によって、論理学から全数学を導くことができないことを明らかにしてしまいます。

このことによって、ウィーン学団は、科学的な手法を失ってしまいます。

ふたたび、言語にもどってくるも、言語理解にも限界がある、相互理解という理想こそが幻想である

観察は常に一定の理論を背負っているわけで、理論に基づかない観察は存在しないといっています。

これを、観察の理論負荷性といい、演繹法をうしなった科学の帰納的アプローチである。

・帰納法のパラドックス:ニュートン力学は、人間がかかわる大半には、正確に予測することができている

・現実は、複雑系の中で成り立っていて,容易に予測はできない。

・なので、科学は論理的であるにもかわらず、現実を帰納的な方法でないとアプローチができず、演繹的でなければならない科学の検証方法に帰納法を使わなけれがならない矛盾が生じる。

これを帰納法の正当化という。

・ファイヤアーベントの「方法への挑戦」が紹介されていて、単に科学理論ばかりではなく、あらゆる知識について、優劣を論じるような合理的基準は存在しないというものだ。

ファイヤアーベントが言いたかったのは、何も科学を否定しているわけではなく、既成の方法論にこだわるなということいっている。科学と非科学、西洋文明と非西洋文明、合理主義と非合理主義は、それぞれどちらもおなじだけの権利で存在するということいっている。

どうやら、結論は、限界があるので、科学と理性にばかりたよるな。と理解しました。

目次

序章 シンポジウム「知性の限界」開幕「理性の限界」懇親会場より

第1章 言語の限界
第2章 予測の限界
第3章 思考の限界
おわりに
参考文献

ISBN:9784062880480
出版社:講談社
判型:新書
ページ数:279ページ
定価:900円(本体)
発行年月日:2010年04月20日 第一刷

高橋昌一郎氏の著書

■ 20世紀論争史~現代思想の源泉~
■ ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論
■ ノイマン・ゲーデル・チューリング
■ フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔
■ 愛の論理学
■ 科学哲学のすすめ
■ 自己分析論
■ 実践・哲学ディベート
■ 小林秀雄の哲学
■ 哲学ディベート
■ 東大生の論理
■ 反オカルト論
■ 理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性
■ 知性の限界 不可測性・不確実性・不可知性
■ 感性の限界 不合理性・不自由性・不条理性

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感想投稿日 : 2023年1月18日
本棚登録日 : 2023年1月10日

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