死の壁 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社 (2004年4月16日発売)
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人生の問題に正解はない、そもそも本に書いてあることを全部絶対正しいなんて思わないでくれ
実際に、何でも、「調べればわかる」「見ればわかる」というようなことはありません
ただし、人生でただ一つ確実なことがあります。人生の最終解答は、「死ぬこと」だということです。

気になったことは、以下です。

なぜ人を殺してはいけないのか
 ⇒ 二度と作れないもの だから
 ⇒ 殺すのは簡単、でも後戻りできない

人間が死ぬということが知識としてはわかっていても、実際にはわかっていない
そもそも、人間とは移り変わるもの。平家物語でも、方丈記でも、中世文学に流れているものは、人とは変わっていくものであると語っています。
中世に描かれた「九相詩絵巻」。そこに描かれているのは、生きた美女が死んで、腐っていき、最後は、骸骨になるまで。人間型の骸骨だったのがバラバラになるところまでが描かれている
中世は、死がとても身近なものだったのです
逆に、現代人にとって「死」は実在ではなくなってきている。

生とは何かがわからないと、死とは何かもわからない
脳死が、部分的な脳死が、ほんとうの死なのかどうかは実はわからない
生死の境目、死の瞬間が厳格に存在しているというのは勝手な思い込みにすぎない

臓器移植が始まる前までは、死とは、 ①自発呼吸が止まる ②心拍がとまる ③瞳孔が開く であったのに、現代は、「ハテ?」となっている。

死体って、もの、それとも人。塩をきよめに使うというのは、穢れとみているから、死体とは穢れ
戒名とは、死んだから別のものになったから、死んだ奴は我々の仲間ではない

日本人は、火葬を拒否する人はあまりいません。でも、イラン人は火葬して問題になる。それは宗教で火葬を禁じているから。

靖国のルール、死者は別もの、だから、神さまとしておまつりしても問題はないという考え

7章からは、別の論点となります。

一元論に陥ったときに、人は絶対の真実があると思い込んでいます
「みんなのため」は、本当にいろんなことをしなければならない。決して、「みんなと一緒のことをする」ではない

乃木希典の覚悟、兵を死にやった重さを背負わなければならなかった。人の上に立つ人というのは、本来こういう覚悟がなくてはいけない。

みんなが嫌がることは、エリートがやっていた。エリートとはいうのは本来はある種の汚れ仕事を引き受ける立場の人だった。現在は、エリートが存在しにくくなったということになります。

エリート教育がなくなってしまっているのが根本です。多くのトップ、指導者に自分が生死を握っているという意識がなくなっているのもそのせいです。

死の恐怖は存在しない。 死んだらどうなるかというようなことで悩んでも仕方がないのです。自分の死について延々と悩んでも仕方がないことです
老醜うんぬんというのはありまでも、他人が見ての話であって、当人の問題ではありません。

周囲の死を乗り越えてきた者が生き延びる。「神に愛される者は早死にする」

目次

序章 「バカの壁」の向う側
第1章 なぜ人を殺してはいけないのか
第2章 不死の病
第3章 生死の境目
第4章 死体の人称
第5章 死体は仲間はずれ
第6章 脳死と村八分
第7章 テロ・戦争・大学紛争
第8章 安楽死とエリート
終章 死と人事異動
あとがき

ISBN:9784106100611
出版社:新潮社
判型:新書
ページ数:192ページ
定価:760円(本体)
発売日:2004年04月15日

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感想投稿日 : 2023年7月10日
本棚登録日 : 2023年7月10日

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