読書からはじまる (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房 (2021年5月12日発売)
3.85
  • (50)
  • (49)
  • (39)
  • (11)
  • (4)
本棚登録 : 1279
感想 : 53
5

本を読むということがどういうことなのかを考えるのが本書です。

「読まない本」にゆたかさがある。「たくさん読む」が正解ではない。
ことばがゆたかな人は、ゆたかである。ことばが貧しい人は、貧しい。

気になったことは以下です。

・友人としての本。友人というのはその場かぎりではありません。「ずっとつづく」関係です。

・どこへ行っても、みなおなじ。今はどこへ行こうと、日本のどこもおなじ表情をもつようになった。ミリオンセラーの本も、ほとんど急速に読まれなくなり、昨年のベストセラーは今年は、もう読まれないのが普通。生活のなかで考えるなら、おたがいの違いを表すものがあるとすれば、それは、「言葉」です。
・母なるものとは自分が生まれ育った言葉のこと。
・今の日本のなかでゆたかでないものがあります。私たちにとって今いちばんゆたかでないものは、言葉です。

・マイ・フェア・レディという、オードリー・ヘップバーンの映画があります。映画は、とても元気がいいけれども、貧しい語彙と粗野ないいまわしと不調法な話し方しか知らない若い女性が、苦心惨憺のあげくに、みずから言葉をゆたかにしていくようになるまでを、巧みに描きます。その映画の急所は、言葉のもち方が、一人の人間を人格をつくるのだということです。

・言葉をゆたかにするというのは、自分の言葉をちゃんともつことができるようになることです。

・どんなに、おカネをもっていても、おカネで買えないものが、言葉です。

・言葉の貧しい人は貧しい。言葉をゆたかにできる人はゆたかだということを、忘れないようにしたい。

・本は年齢でよむものではない。本を読むというのが、新しいものの見方、感じ方、考え方の発見を誘われることでないなら、読書はただの情報にすぎなくなり、それぞれの胸の中にけされないものとしてのこる何かをもたらすものとしての、読書の必要は失われます。

・人は何でできているか。人は言葉でできている。言葉は人の道具ではなく、人の素材なのだということです。

・情報でない言葉が重要。伝わってのこるものは、その人の表情、身振り、雰囲気、気分といった、不確かな、非情報的な言葉です。

・人の表情は、言葉のかたちをもたない言葉です。

・良寛いわく、「耳を洗え」。耳を洗うというのは、我見をもたぬということだ。

・民話の芯になっているのは、ひとを現在に活かすものとしての、記憶の目安です。

・情報はふえればふえるほど、逆にコミュニケーションはすくなくなってゆく。

・読書の核をなすのは、努力です。情報の核をなすのは享受です。読書は個別な時間をつくりだし、情報は平等な時間を分け合える平等な機会をつくりだします。簡単に言ってしまえば、読書というのは、「育てる」文化なのです。対して情報というのは本質的に、「分ける」文化です。

・「育てる」文化の基本は個性です。「分ける」文化の基本にあるのは平等です。きわめて平等であるけれど、またきわめて画一であることも事実です。

結論
・人は読書をする生き物です。人をして人たらしめてきたのは、そう言い切ってかまわなければ常に読書でした。

目次
はじめに
1 本はもう一人の友人
2 読書のための椅子
3 言葉を結ぶもの
4 子どもの本のちから
5 共通の大切な記憶
6 今、求められること
7 読書する生き物
8 失いたくない言葉
あとがき
解説

ISBN:9784480437426
出版社:筑摩書房
判型:文庫
ページ数:240ページ
定価:720円(本体)
発行年月日:2021年05月
発売日:2021年05月12日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DSRC
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:VSL

読書状況:いま読んでる 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年12月24日
本棚登録日 : 2022年11月3日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする