すごい宇宙講義

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  • イースト・プレス (2013年6月24日発売)
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位置No. 373
シュヴァルツシルトのものが一番単純なかたちで――真ん中に特異点があり、その周りに「事象の地平面」がある、というものです。 次に、カーという人が、真ん中の特異点が回転している場合を考えました。回転していると、特異点はリング状になって、「事象の地平面」も同じように、ちょっと横に膨らんだようなかたちになります。 それから、ライスナーとノルドシュトレームという二人が、特異点が電気を帯びていた場合を考えました。さらにカーとニューマンの二人が、その電気を帯びている特異点が回転している場合を考えまし

位置No. 466
星も同じで、赤色巨星という大きな星が、重力崩壊によって中性子星という小さな星になる( 縮まる )。星はもともとゆっくり自転していますから、それが急激に小さくなれば回転速度はものすごく上がるんです。 そして、星というものは必ず磁場を持っています。地球だって磁石を置いたら、北と南にちゃんと向きますから。磁場を持ったものがものすごい速度で回転すると、パルス状の電波を飛ばすんです。規則正しく電波を飛ばすため、中性子星はパルサー( パルスを出すもの )とも呼ばれているんです

位置No. 896
重力などの自然界にある力は、( 詳しくは第四章でお話ししますが )媒介粒子をキャッチボールすることで力を伝えるわけです。一方で、遠心力が作用するのは、動きにくさ・動きやすさとしての質量( こちらも第四章でお話ししますが、ヒッグス粒子に関わってくる質量 )でして、つまり、同じ「力」とは言っても、ぜんぜん違う観点から考え出された「力」なんです。 でもこの2つが釣り合うってことは、同じものとして扱っていいんですよ――なぜなのかはわかりません、でも確かに同じなんです――事実としてそうなんだから、それを原理としましょう。それが「等価原理」です。

位置No. 1027
クエーサーと呼ばれる、宇宙の彼方にある――というのはすなわち宇宙の初期に作られた、という意味なんですが――ものすごい量のエネルギーを吹き出している天体があったんですよ。「これがホワイトホールでは?」と言われていた時代があったんですが、実際はブラックホールだったんです。

位置No. 1511
つまり赤方偏移はこうやって起きているんです。ドップラー効果ではなくて、空間そのものが伸びてしまっているために、その空間に引っ張られて波長が伸びている、これが赤方偏移の原因なんです。これで計算すると、現在の赤方偏移はぴったりと合う。

位置No. 1549

宇宙の初期はこんなに均一なのに、なぜそこからグレートウォールだとかボイドだとか、そういう偏りが生まれてしまうんだろうか?

位置No. 1612
でも先ほどのWMAPが捕らえた宇宙背景輻射を見てみると、こんなにも―― 10 万分の1の差で均一にかき混ざっているんです。おかしい......本来、混ざらないはずの領域が無数にあってしかるべきなのに、なんでどこもこんなにきれいに混ざっているのか? その理由を単純なビッグバン宇宙論では説明できないのです。 これが「地平線問題」です。

位置No. 1630
そのような「宇宙の重さ( 物質の量 )」を、宇宙論から計算した「臨界密度」と呼ばれる数値と比較します。そして、もし「宇宙の重さ」と「臨界密度」がぴったりと同じであれば――つまり宇宙には物質( 重力 )が ちょうどの量 だけ含まれていれば――空間は平坦になる。でも、ちょっとでも違っていたら( 臨界密度よりも重かったり、あるいは軽かったりすると )空間は曲がる(

位置No. 1638
平坦になっている理由が必要なんですが、ビッグバン宇宙論はそれに答えてくれません。 これがビッグバン理論で説明ができないことの2つめ、「平坦性問題」です。

位置No. 1658
磁力線が閉じてなければならないのは、 連続した空間の中である限り、ということです。不連続な空間では閉じていなくてもいい。

位置No. 1687
宇宙初期における相転移でも、同じことが起こります。同じ状態になる領域( 単結晶の領域 )は狭い範囲に限られ、その領域と別の領域は「不連続な空間」になるんです。 そして、この「不連続な空間」では、磁力線は途切れてしまうのです。磁力が伝わる速さだって、ある有限の値( 電磁力=光速 )ですから、それよりも相転移が速ければ――相転移は宇宙初期のほんの一瞬の間に起きたわけですが、詳しくは第四章でお話しします――空間は不連続になり、磁力線が切れてしまう。「相転移の情報が伝わる速さ」に加えて宇宙そのものの「膨張の速さ」も混ざっているのでややこしいのですが。

位置No. 1693
その不連続な空間の境目では、あたかも磁力線が突然発生していたり、あるいは、突然消えてしまっているかのように見えるわけです。それらはN極のモノポールやS極のモノポールとして観測されるはずです(

位置No. 1733
宇宙は最初一人で全体を充分かき混ぜられるくらい小さかった。この小さいお風呂の時期に充分かき混ぜて温度を均一にしてから、インフレイションによっていっきに膨らんだのなら、遠く離れた場所が同じ温度なのも納得、というわけです。

位置No. 1736
次に「平坦性問題」――なぜこんなに平坦なのか?――については、インフレイションによってものすごい速さで膨らんだため、もし宇宙がもともと曲がっていたとしても、空間がいっきに引っ張られたおかげで、我々が観測できるスケールでは「平坦になった」というわけです。 たとえば、地平線の例で考えた場合、仮にもし地球が今くらいの大きさではなく、太陽の何倍もある超巨大な惑星で、その地平線が人間の視力が及ばないほどに遠くにあったとしたら、地面が曲がっていることが実感できませんよね? つまり宇宙の地平線も、インフレイションによる圧倒的な膨張のせいで、はるか遠くに――観測できないくらい遠くにいってしまったのではないか、というわけです。

位置No. 1745
そして「モノポール問題」――なぜ空間の欠陥( 磁力線が途切れているところ )が見つからないのか?――については、インフレイションがあったと考えれば、もともとの宇宙のサイズはめちゃくちゃ小さかったことになるので、相転移の際、ほとんど単結晶に近い状態できれいに固まったのではないか、ということです。もしそこそこ宇宙が大きければ相転移によって単結晶が無数に出来てしまう――結晶のムラが出来る。つまりモノポールが無数にできるはずですが、全体が非常に小さいのであれば、きれいに固まるはずです。なので、結晶と結晶の境目=「空間の欠陥」はほとんど出来なかったのではないか? そして宇宙はインフレイションによっていっきに広がったため、その欠陥は、今は我々がいる場所よりもはるか遠くのほうにある(

位置No. 2193
「ホットダークマター」は非常に速く動いている暗黒物質で、「コールドダークマター」は、ゆっくり動いている( ほとんど動いていない )暗黒物質のことなんですが、このホットダークマターの一番の候補が、ニュートリノなんですね。ニュートリノはほぼ光の速さで動きますから非常に速い( =熱い )。 しかもニュートリノは、宇宙のなかでは光の次に多いので、数としては大量にあります。もしニュートリノがわずかに質量を持っていたら、宇宙全体としてはものすごい質量になります。そして、ニュートリノに質量があることが、今世紀に入ってから確定的になりました。まさに暗黒物質の候補として有望なわけなんですが、ところがですね、これが違っていたんですね。

位置No. 2263
突っ込んできても、反応が弱いのでほとんどが通り抜けてしまうんですが、ごくまれに、キセノンの原子核に衝突します( 図 68)。 WIMPは「重い」――ここがポイントです。もしこれが、たとえばアクシオンやニュートリノみたいに軽かったら、当たってもキセノンの原子核はそのまま動かないんです。軽いものが当たってもびくともしない。 ところがWIMPは重いために、当たるとキセノン原子核が弾き飛ばされます。原子核というのは、電気を帯びてますよね( +の電気です )。電気を帯びたものが動くわけですから、シンチレーターの中では当然光が発生します。そしたら、この光を捕まえてやれば、「お、WIMPが当たったな」とわかるわけですね。 跳ね飛ばされたキセノン原子核がシンチレーターを光らせる。飛ばされた原子核が玉突きになっているので、光( 原子核の軌跡 )が四方八方に飛んでいきます。この光を、光電子増倍管を使って検出すれば、おそらくWIMPを見つけられるだろう、ということなんですね。

位置No. 2378
もし宇宙が通常の物質( 陽子や電子など )だけで成り立っていたら、宇宙はこんな構造にならないはずなんです。陽子や電子は数が少ない上にいろんな力に反応するので、それらだけだと自然に固まることができない。星になるためには、材料を固めるための力、つまり 重力 が必要なんですが、固まったり、あるいは散らばったりするためには、普通の物質( 陽子や電子 )以外にも、もっともっと多くの、できれば重力にだけ反応する物質がないといけない。そのことがシミュレーションなどからわかっています。そこで、暗黒物質の登場です。 先ほど暗黒物質の分布の絵をお見せしましたね( 図 63 )。暗黒物質がこのようにまだらに分布しているおかげで、星や銀河もまだらになっているんです。

位置No. 2558
超対称性粒子のなかで、暗黒物質の候補として最も有望視されているのは、「ニュートラリーノ」です( ニュートリノの超対称性粒子ではありません )。 これは、 電荷を持たない 3つの超対称性粒子「フォティーノ」「ジーノ」「ヒグシーノ」が混ざった状態のものです( 暗黒物質の候補になるほどたくさんある物質が電荷を持っているなら、すでに容易に検出されているはずです )。第三章でお話ししたとおり、その質量は、陽子の数十倍よりも大きいと考えられています。WIMPの正体は、これではないかと考えられています。

位置No. 2576
一方で、もしこの粒子と反粒子の寿命が違っていたり、壊れ方が異なっていたり――たとえば粒子のほうは壊れて2個になるのに、反粒子のほうは壊れて3個になる場合が稀にある、というときは、弱い力は、「C反転」に対して対称でない( =C対称性が破れている )。 と言います。ある力が同じように働いていない、というわけです。そして実際、C対称性は破れていることが実験からわかりました。

位置No. 2597
弱い力ではCP対称性は破れているのですが、一方で、強い力では驚くほどの精度で、このCP対称性は守られているのです。強い力の働きについて説明する「 量子色力学」に於いては、対称である理由は特にない――CP対称性の「破れ度合い」を表す量を θ という量で表すのですが、この θ は、量子色力学的にはどんな値を取っても構わない――にも関わらず、恐ろしいほどの精度で、 θ =0となっているのです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: キンドル
感想投稿日 : 2021年2月26日
読了日 : 2021年2月26日
本棚登録日 : 2021年2月26日

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