この世の全部を敵に回して

著者 :
  • 小学館 (2008年4月24日発売)
3.04
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本棚登録 : 251
感想 : 49
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(2014.09.01読了)(2014.08.30購入)
川上弘美さんの書評を読んで興味を持ちました。古書店で探したら見つかったので購入してきました。140頁ほどなので、さっそく読み始めました。
小説かと思ったのですが、本の分類は、C0093ではなくて、C0095になっていますので、エッセイでした。
小説を書く中で、人間の生と死についてあれこれと考えたことを一冊の本にまとめておきたくて書いたものと思われます。
人間は生まれてきて、いずれ死にます。自分で死を選ぶ人もいますが、病気や事故で亡くなることもあります。長く生きて天寿を全うすることもあります。
生きていてもしょうがないと死を選ぶ人もいますが、不死を願って不老長寿を願う人もいます。肉体は滅んでも、魂は生き続けると信ずる人もいます。
輪廻転生を信じて、因果応報を考えながら生きる人もいます。
人間の生と死にまつわるいろんな考え方を考察しながら、その考え方の中で、自分はどれを取るのかを述べて行っています。なかなか興味深い本でした。
高校生、大学生ぐらいの方にお勧めの本です。

【目次】
刊行者の言葉
この世の全部を敵に回して
 第一部
 第二部

●金銭の簒奪者(12頁)
彼ら(子供たちと妻)は私がこれまで働いて得てきた金銭の容赦なき簒奪者である。もしも彼らという存在がなければ、私はいまのこの生活より格段に物質的に恵まれた暮らしを営むことができたに違いない。
●よりよく生まれるための本(26頁)
よりよき死を迎えるために説かれた本でさえ、死の直前までいかに「生きるか」を説いた本にすぎないし、よりよく生まれるための本は一冊もこの世界に存在しない。
●死の確認(35頁)
あなたは自身の誕生によって人生の始まりを確認したが、死によって自らの死を確認することができないのだ。
●不死の世界(53頁)
不死の人間同志に特定の恋愛など必要だろうか? 当然、不死の世界での繁殖には何一つ意味がない。そもそも繁殖という概念が消滅するだろう。親子、兄弟、親友、そうした限定的人間関係もまた不死の世界では無意味である。誰も死なない世界で婚姻届を提出する人間は恐らく一人もいないだろう。
●死とは(55頁)
私たちにとっての死とは肉体の消滅であると共に「私」という意識活動の停止である。肉体の死と意識の死、この二つが同時に起る現象がしなのである。
●霊魂の永遠(56頁)
肉体が滅んでも、私という意識は死なずに天国か地獄で生き続ける
(2014年9月10日・記)
商品の詳細説明(楽天)
人間は、どこから来て、どこに向かうのか——。生きがたい思いを漫然と抱くすべての人に、作者から突き付けられた八万文字分の言葉の爆弾。
(「BOOK」データベースより)amazon
私という人間は、生まれてこなくてもちっとも構わなかった。二十一世紀の「人間失格」。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2014年9月10日
読了日 : 2014年9月1日
本棚登録日 : 2014年8月31日

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