閔妃(ミンビ)暗殺―朝鮮王朝末期の国母 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1993年7月29日発売)
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「閔妃暗殺」角田房子著、新潮文庫、1993.07.25
468p ¥660 C0193 (2022.11.10読了)(2014.08.26購入)(2006.02.05/16刷)
副題「朝鮮王朝末期の国母」

●日本大百科全書(ニッポニカ)「閔妃」の解説
閔妃(びんひ / ミンピ)(1851―1895)
李氏(りし)朝鮮第26代高宗の妃。1866年に王妃に冊封(さくほう)された。時の執権者であった高宗の実父大院君と対立し、閔氏一族を中心に反対派を糾合、政府の要職に登用し、73年には国王親政の名のもとに大院君を退け、自ら権力を握った。鎖国主義を改め、76年には日本と江華条約(日朝修好条規)を結んだ。82年の壬午(じんご)軍乱で失脚したが、ふたたび政権を掌握。84年の甲申政変では一族の有力者を失いながらも、清(しん)国軍の介入で政変を挫折(ざせつ)させた。日清戦争後、親日的な金弘集らの手で甲午改革が始まると、ロシアに接近して日本の侵略を阻止しようと図った。これを憎んだ日本官憲、浪人の手によって、95年10月8日殺害され、死体は焼却された。
[宮田節子]

●デジタル大辞泉「三浦梧楼」の解説
みうら‐ごろう【三浦梧楼】[1847~1926]
軍人・政治家。山口の生まれ。広島鎮台司令長官として萩の乱を鎮圧。のち、朝鮮特命全権公使として閔妃びんひ殺害事件を起こした。晩年は山県有朋とともに政界の黒幕として活動。

読んでみたいなと思う本の多くは、どういうわけか分厚いのが多くて困ります。読み始めるのに敷居が高くなかなか手に取るのに時間がかかります。
先月『物語韓国史』を読んで助走をつけて覚悟して読み始めました。10日ほどかかって読み終わりました。
明治時代からの日韓関係を知るうえで読んでおいた方がいい、本だと思います。

●権力(128頁)
すべての人を支配し、国の運命をわが手で左右する満足感、陶酔感……。〝権力〟という名の美酒を一度味わった者は、生涯その魔力から解放されることはむずかしいらしい。
●日清戦争(268頁)
日清戦争勃発前後の日本人は、清国と朝鮮の関係をどう考え、この戦争をどう受け止めていたのか――。
日本人のほとんどすべてが、一口に言えば、これを〝義戦〟と考えていた。長年にわたり弱い朝鮮をいじめてきた横暴な申告をこらし、朝鮮の独立を助けるため、力を貸そう――というものである。
●王妃暗殺(427頁)
王妃を殺されたことへの民衆の怒りはすさまじかった。閔妃が国民にとってどのような王妃であったか、ということは別問題で、自国の王妃が日本の暴挙によって抹殺されたことへの国民としての怒りであり、日本はこれからも朝鮮に対して何をするかわからないという暗い予感ともつながっていた。
●三浦梧楼の犯罪(430頁)
資料に基づく限り、閔妃暗殺は三浦梧楼の犯罪である。当時の公使には軍の指揮権もあり、機密費もたっぷり持っていた。政府と裏でつながっていなくても、独力で閔妃を暗殺することは可能であった。今の私には、当時の政治状況と日清戦争直後の国力、軍事力から判断して、政府が閔妃暗殺に直接関係していたとは考えられない。

【目次】
プロローグ―池上本門寺の墓地にて
李氏朝鮮王朝通信使
大院君、政権を握る
閔妃登場
悲しき王妃の座
閔氏一族の結束
王世子誕生
朝鮮の鎖国を破った日本
反閔妃、反日のクーデタ
大院君拉致事件
開化派青年たちの見た日本
閔妃暗躍
王妃をとりまく外国人たち
刺客と世紀末のパリ
外務大臣陸奥宗光の記録
朝鮮王朝の分裂外交
閔妃の自負心
日本公使の交替
下関の李鴻章
公使井上馨の失権
王妃暗殺計画
決行前夜
暁の惨劇
広島裁判の謎
陸奥宗光への疑惑
エピローグ―日韓併合への道
あとがき
解説  大江志乃夫
主要参考文献

☆関連書籍(既読)
「朝鮮史」梶村秀樹著、講談社現代新書、1977.10.20
「物語韓国史」金両基著、中公新書、1989.05.25
「古代朝鮮史」井上秀雄著、日本放送出版協会、1988.04.01
「韓国の古代文化」韓炳三著、日本放送出版協会、1995.04.01
「蒙古襲来(上)」網野善彦著、小学館ライブラリー、1992.06.20
「蒙古襲来(下)」網野善彦著、小学館ライブラリー、1992.06.20
「「蒙古襲来絵詞」を読む」大倉隆二著、海鳥社、2007.01.15
「朝鮮通信使」仲尾宏著、NHK人間講座、2001.04.01
「韓国併合」海野福寿著、岩波新書、1995.05.22
「韓国」渡辺利夫著、講談社現代新書、1986.10.20
「スカートの風」呉善花著、角川文庫、1997.02.25
「徹底検証朝日「慰安婦」報道」読売新聞編集局著、中公新書ラクレ、2014.09.30
「儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇」ケント・ギルバート著、講談社+α新書、2017.02.20
(「BOOK」データベースより)amazon
時は19世紀末、権謀術数渦巻く李氏朝鮮王朝宮廷に、類いまれなる才智を以て君臨した美貌の王妃・閔妃がいた。この閔妃を、日本の公使が主謀者となり、日本の軍隊、警察らを王宮に乱入させて公然と殺害する事件が起こった。本書は、国際関係史上、例を見ない暴挙であり、日韓関係に今なお暗い影を落とすこの「根源的事件」の真相を掘り起こした問題作である。第一回新潮学芸賞受賞。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アジア情勢
感想投稿日 : 2022年11月10日
読了日 : 2022年11月10日
本棚登録日 : 2022年10月31日

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