海からの贈物 (1967年) (新潮文庫)

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感想 : 3
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(2004.06.06読了)(拝借)
前からかみさんの本棚にあって、気になっていた本だったのだが、「遠い朝の本たち」を読んでいたらリンドバーグ夫妻の話があり、この本も出てきたので、この機会に読むことにした。
●序
「私自身の生活のあり方、私自身の生活や、仕事や、付き合いの釣り合いの取り方について考えてみるために書いた。」
●浜辺
「浜辺へは藁の籠に本や、紙や、ずっと前に返事を書くはずだった手紙や、削りたての鉛筆や、しなければならないことの表などを一杯詰めて、張り切って出かけてゆく。そして本は読まれず、鉛筆は折れて、紙は雲一つない空と同じ状態のままになっている。読みもしなければ、書きもせず、ものを考えさせもしない。」(土日に自宅で仕事をするつもりで持って帰るけど、ほとんど何もせずに月曜日にそのまま持って会社へ行くというのと似ている。)
●ほら貝
「浜辺の生活で第一に覚える事は、不必要なものを捨てるということである。どれだけ少ないものでやって行けるかで、どれだけ多くでではない。最初に着物で、着物を何枚も持っていなくてもいい事に、気付く。助かるのは、何をきるかということで頭を悩まさずに済むことである。着物の面倒がなくなるのは、虚栄心を捨てることでもあることがわかる。
その次は、自分の住居である。ここでは、屋根と壁だけの家に住んでいる。暖房も、電話も、下水も、湯を沸かす設備も無い。家具もなるべく少なくして、必要なものはほんの少ししかない。私は、生きてゆく上で一番疲れることの一つは、体面を繕うことだということを知っている。それだから、社交というものがあれほど私たちを疲れさせるので、それは私たちが仮面をかぶっているからである。」
●つめた貝
「われわれは結局は、皆孤独なのである。誰も自分が孤独であると考えたくは無い。
我々は今日、一人になることを恐れるあまりに、決して独りになることがなくなっている。家族や、友達や、映画の助けが借りられない時でも、ラジオやテレビがあって、寂しいというのが悩みの種だった女も、今日ではもう一人にされる心配は無い。昔の女のように一人で空想に耽るほうが、まだしもこれよりは独創的なものを持っていた。それは少なくとも、自分でやらなければならないことで、そしてそれは自分の内的な生活を豊かにした。しかし今日では、私たちの孤独の世界に自分の夢の花を咲かせる代わりに、そこを絶え間ない音楽やお喋りで埋めて、そして我々はそれを聞いてさえもいない。」
「我々が一人でいる時というのは、我々の一生のうちできわめて重要な役割を果たすものなのである。ある種の力は、我々が一人でいるときにしか湧いてこないものであって、芸術家は創造するために、文筆家は考えを練るために、音楽家は作曲するために、そして聖者は祈るために一人にならなければならない。」

著者 アン・モロー・リンドバーグ 
1906年 アメリカ、ニュージャージー州生まれ
 スミスカレッジ卒
史上初の大西洋単独横断飛行の成功者チャールズ・リンドバーグと結婚
2001年 死去

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 随筆
感想投稿日 : 2009年11月17日
読了日 : 2004年6月6日
本棚登録日 : 2004年6月6日

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