テーマは「吃音」だが、関係のない人にこそ関係のある本。あとあまり、普段はノンフィクション読まないという人にも。
すべてが明らかになるわけではなく、すべてに結論が出るわけでない、という、ありのままの姿勢がとてもよかった。小説のように全部が丸く収まるわけではないが、それこそ人生と同じで、読み終えて考えさせられるところが大きい。
他者と関わる必要があるときに問題化する「吃音」は、それを受け入れられるかどうか、そこに社会の柔軟さが問われている、現れるべくして現れた問題のようにも思える。
身近ではないので傍観してしまうところがあるのだと思うが、単純に、「他者としゃべりたくない」という現代社会の悲鳴のような気もした。「うつ」だって、「もう頑張りたくない」という、心の叫びなのかもしれない。この薬を飲んでください、で治るようになったら、もちろん救われる人もいるから解明は待たれるのだけど、病(「おかしい」→「この薬を飲めば治る」)のように単純な問題でもないような気がした。
思いきって言ってしまえば、都市という空間で、私たち自身が悪化させた病状のようにも思われる。(男の人に多いというのも、プレッシャーを感じやすい社会だからじゃないのか、と思ったり。他の国とか、他の時代と比較してみないと何ともいえないが)
症状としては「吃音」であるが、それが問題化する本当の原因は、私たちの脳の中にはないのではないか。根本的に社会の問題を治さなかったら、(それはつまり、昔の感染症などが衛生状態を良くしなければ別の病気が流行ったりするなど、根本的には解決しないのと同じで)それは治った、とはいえないのではないか。
逆説的な見方をすれば、社会をより良くするために現れた社会の課題のようにも思われる。こういう問題をひとつずつ解決しながら、私たちは前に進んでいくのかもしれない。
- 感想投稿日 : 2019年6月4日
- 読了日 : 2019年6月4日
- 本棚登録日 : 2019年5月24日
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