夫はいるが愛し合ってはいない夫婦の妻であるまりの章(奇数)、
愛し合っていた夫を突然失くした未亡人である実日子の章(偶数)が、交互に続いてゆく。
時折混ざり合いながら、とても忠実に、進んでゆく。
そんな2人の、虚無と再生の物語。
2人の日常が、ゆらゆらと綴られている。大きな出来事が描かれている訳では無いけれど、読み終えてみると、1冊の作品の中で、2人の日常はゆったりとした荒波に揉まれていたような印象を受ける。
そこにいるのにいないと思おうとすること。
そこにいないのにいると思おうとすること。
どちらが不幸でどちらが幸せか。
読者に委ねられるのかなと思いきや、最後はちゃんと答えが出ています。
2人の決断と、決断とまでは言えない成り行きのようなもの。
誰かを「嫌い」という感情と、誰かを「愛している」という感情と。
どちらも、強すぎるとしんどいのだろう。
「嫌い」が強い方が日常はしんどいし、「愛している」が強すぎると、奪われた時の絶望は計り知れない。この2人の女性を見ていて、どっちの方が楽そうとか、どっちの方が辛そうとか、そういうことではなくて、2人ともがそれぞれにしんどそうだ。
同世代、というか同い年くらいの女性が主人公の、大人の恋愛小説。
1人は結婚して数年経ち、夫との関係性に悩み、1人は夫を亡くして悲しみに暮れている。
同世代の経験の豊かさに圧倒される。
わたしはいつまで高校生みたいな恋愛を続けるのだ。
コロナ禍でありつつも少しずつ活気が出てきた飲食店で、わたしは時々、男性とお酒を飲む。
以前よりかっこつけずに男性と接せられるようになったものの、やはりわたしにはトキメキが必要のようで。
友人が紹介してくれた安心で安全な男性よりも、深夜に電話をかけてくる元カレに気持ちが傾いてしまったり。
結婚には安心安全がベストなのだろうけれど、恋愛の初めには、やっぱりトキメキたいじゃない。
わたしがトキメく男性を、わたしの友達は大概「やめときな」って言う。
んなことわかってる。
でも最近、気が付いたんだよね。
なんか、この人と一緒にいる時無理してるよなー、とか。実は会うたびにちょっとずつ傷ついてるよなーって。
こないだ、それがちょっと限界になったかな。
だからもう、自分の意思で、やめとく。
ここにはいない男について、そんな風に思う。
- 感想投稿日 : 2022年9月22日
- 読了日 : 2022年9月10日
- 本棚登録日 : 2022年9月22日
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