そこにはいない男たちについて

著者 :
  • 角川春樹事務所 (2020年7月15日発売)
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本棚登録 : 778
感想 : 78
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夫はいるが愛し合ってはいない夫婦の妻であるまりの章(奇数)、
愛し合っていた夫を突然失くした未亡人である実日子の章(偶数)が、交互に続いてゆく。
時折混ざり合いながら、とても忠実に、進んでゆく。
そんな2人の、虚無と再生の物語。
2人の日常が、ゆらゆらと綴られている。大きな出来事が描かれている訳では無いけれど、読み終えてみると、1冊の作品の中で、2人の日常はゆったりとした荒波に揉まれていたような印象を受ける。

そこにいるのにいないと思おうとすること。
そこにいないのにいると思おうとすること。
どちらが不幸でどちらが幸せか。
読者に委ねられるのかなと思いきや、最後はちゃんと答えが出ています。
2人の決断と、決断とまでは言えない成り行きのようなもの。

誰かを「嫌い」という感情と、誰かを「愛している」という感情と。
どちらも、強すぎるとしんどいのだろう。
「嫌い」が強い方が日常はしんどいし、「愛している」が強すぎると、奪われた時の絶望は計り知れない。この2人の女性を見ていて、どっちの方が楽そうとか、どっちの方が辛そうとか、そういうことではなくて、2人ともがそれぞれにしんどそうだ。

同世代、というか同い年くらいの女性が主人公の、大人の恋愛小説。
1人は結婚して数年経ち、夫との関係性に悩み、1人は夫を亡くして悲しみに暮れている。
同世代の経験の豊かさに圧倒される。
わたしはいつまで高校生みたいな恋愛を続けるのだ。
コロナ禍でありつつも少しずつ活気が出てきた飲食店で、わたしは時々、男性とお酒を飲む。
以前よりかっこつけずに男性と接せられるようになったものの、やはりわたしにはトキメキが必要のようで。
友人が紹介してくれた安心で安全な男性よりも、深夜に電話をかけてくる元カレに気持ちが傾いてしまったり。
結婚には安心安全がベストなのだろうけれど、恋愛の初めには、やっぱりトキメキたいじゃない。

わたしがトキメく男性を、わたしの友達は大概「やめときな」って言う。
んなことわかってる。

でも最近、気が付いたんだよね。
なんか、この人と一緒にいる時無理してるよなー、とか。実は会うたびにちょっとずつ傷ついてるよなーって。
こないだ、それがちょっと限界になったかな。
だからもう、自分の意思で、やめとく。
ここにはいない男について、そんな風に思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年9月22日
読了日 : 2022年9月10日
本棚登録日 : 2022年9月22日

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コメント 8件

たけさんのコメント
2022/09/23

naonao さん。

また奇遇!
直近のレビューした本が「読者に委ねられるのかなと思いきや、最後はちゃんと答えが出ている」シリーズ…

全然関係ないけど、久々に青梅マラソンにエントリーしました。
大会まで禁欲的に走っていこうと思います。

naonaonao16gさんのコメント
2022/09/23

たけさん

あれですね!金原さんですね!
毎度毎度奇遇ですね笑

マラソン!すごい!頑張ってください!
わたしは健康診断で、半年前よりウエスト-3cm、体重-1kgの結果で、トレーニングのモチベーション爆上がりしました!!

たけさんのコメント
2022/09/23

naonaoさん

そう、金原さんのです。
もう読まれました?
金原さんの作品、未読も多いですが、今のところモストフェイバリットな作品です。

トレーニング効果で出ますね!すばらしい!
しかし、安全安心ではなくトキメキを求めるなら、ぜひマラソン大会に出ましょうよ!
走り終わった後の多幸感ハンパないっす。

naonaonao16gさんのコメント
2022/09/23

たけさん

まだ読んでないですー
文庫待ちですかね...
しかしモストフェイバリットとはますます気になります!

ええー!トキメキでマラソンですか!?笑
確かに、最近有酸素運動も取り入れてるんですが、終わったあとの爽快感といったら...

bmakiさんのコメント
2022/09/25

やめときゃいいのに、、、と言われる男の人ほど、魅力的に映るのかもしれないですよね(^_^;)
何かちょっとわかります。

naonaoさんにこんな感想を書かせる本、気になるなぁ。
最近恋愛系の小説は読んでなかったから読んでみようかな(*^^*)

自分の恋愛はすっかりご無沙汰ですが、ドキドキするのって絶対お肌にいいですよね(*^^*)
Twitterに、恋愛映画見るだけでも全然違うって書いてありました。

日々、実世界でドキドキがあるのって素敵なことだと思います(*^^*)
無理したり、傷ついたり、ときめいたり、そんな日々も、後から思い返すととてもステキな経験じゃないかな?って感じます(*^^*)

naonaonao16gさんのコメント
2022/09/25

bmakiさん

コメントありがとうございます!

そうなんですよ、ちょっと危険な香りがする人って魅力的ですよね!
ドキドキやトキメキを、俳優さんや2次元に求められれば、現実はもう少し落ち着く気がするんですが...
以前はそういう「推し」のような存在があったんですが最近はなくて、現実に刺激を求めちゃうんですよね~
危ない笑

恋愛映画でも見てみたら少し違うかもしれないですね。
今は少し、現実の重たい感情から距離を置きたいです笑

bmakiさんのコメント
2022/09/25

この本、Amazonでポチっちゃいました(^_^*)
いつもありがとうございます。
次に読む本、naonaoさんの本棚からってこと増えてきましたヽ(^o^)

推しが居る生活って良さそうですよね!
うちの娘はジャニーズにハマり、九州でも北海道でも飛んでいってしまいます。
そこまでハマれるのって、羨ましくもあります。

実生活での重たい感情は、、、、
確かに時々疲れてしまうことがありますよね。。。
クールダウンさせたくても、なかなか感情が言うこときかなかったり。。。

本でも映画でも、お酒でも、何か違うこで楽しんで、気を紛らわせながら時間をかけることで、またきっと回復してくるのでしょうね(*^^*)
時々は、ご自身を甘やかせてあげてくださいね!

naonaonao16gさんのコメント
2022/09/25

bmakiさん

おお!ご購入されましたか!
bmakiさんのその行動力、いつも尊敬します!

日常生活送る間に落ち着いてくといいんですけどね。
まだ少し時間はかかりそうです。

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