2014.7記。
筒井康隆氏の短編、「最後の喫煙者」(オリジナルは「夜のコント・冬のコント」所収)。禁煙が絶対善の世の中で、世界最後の喫煙者となった主人公が国会議事堂に立てこもって戦うという相変わらずしょうもない筋書の、しかし最高に笑えてコワイ王道ドタバタ。
主人公は、雑誌に喫煙擁護の一文を寄稿したことで、世の中全体を敵に回すことになる(殺到する批判が「手紙」や「電話」なのは、この小説の発表された20数年前にはインターネットもSNSも(ほぼ)なかったから、でしょう、もちろん)。
読んでいて、「・・・大義名分がある時ほど人間の残虐行為がエスカレートする時はない」(本文より)ことの怖さが身に染みる。悪い奴(だと感じた相手)のことをワンクリックで罵倒できる現代(不届き者のバックレを許さないという意味では重要なことだ)においては、自分が加害者になる危険性も高いことを胸に刻んでおく必要を感じる。
ともあれ、真に心配なのは筒井先生の「確信犯的至芸」とも言うべき文章が、「喫煙の害を過小評価している」といった調子で本当に批判され、読めなくなってしまうことだ・・・。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2019年1月6日
- 読了日 : 2019年1月6日
- 本棚登録日 : 2019年1月1日
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