八甲田山、雪中行軍遭難事件。
日露戦争前夜、寒冷地訓練のために厳冬期の山に挑んだ陸軍部隊210名のうち「199名」が遭難死した、世界最悪の山岳事故とされる。
これが圧倒的に有名になったのは、もちろん新田次郎の小説。高倉健主演で映画にもなった。
私自身、この話には取り憑かれ、各種テレビドキュメンタリーはもちろん、実際に八甲田をトレッキングしてみたこともある。あ、秋ですが、、、紅葉がおそろしく美しかった。そんなにキツくないなだらかな山道。だからこそ風が吹けば防げないのだろう。
本書は、その事故を追う雑誌記者を主人公に、家庭や会社の理不尽を絡めて描く。当初の予想とは違い、エンタメミステリー。
が、山岳遭難の描写は凄まじい。
雪山シーンは新田作品とかぶるのは仕方ないとしても、(菅原と稲田、二人それぞれの)単独行動シーンは一種異様な緊迫感があった。
個人的に山岳地帯の沢登りもやるので(夏ですが、、、)、暗くなって川の音と断崖からの滑落の恐怖を味わう場面はのたうちまわった。こわすぎる。
ただ、フィクションと史実が入り組むので、結局、陸軍の文書の改竄なんかは本当なのか創作なのかよく分からず。
ラスト、いろいろな意味で唸った。
エンタメにはエンタメの矜持が、ある、と感じた。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2021年4月18日
- 読了日 : 2021年4月18日
- 本棚登録日 : 2021年4月18日
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