金融に未来はあるか―――ウォール街、シティが認めたくなかった意外な真実

  • ダイヤモンド社 (2017年6月22日発売)
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感想 : 16
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LSE教授にしてガバナンス論の権威による、金融の本質を問う本。端的に言って激烈な批判本。

原題は”Other People‘s Money”、「他人のカネ」。これともうひとつの引用、「そのころには俺もお前もいない」、この二つで事実上本書は要約できてしまう。

昔はそれなりに企業の目利き、という地味な役割を果たしていた金融が、単なる内輪の賭博、つまり同業同士のトレーディングに化けたひとつのきっかけとして、売っている人間自身が中身を知らない商品、すなわち証券化を激しくやり玉に挙げている。もうひとつ、お金を動かすことに対して手数料が生じる、という設計が壮大なアクションバイアスを呼ぶことも。そしてそれでも儲かることのひとつの原因として、規制が「少なすぎる」のではなく、「多すぎるにもほどがある」(序文より)からだと整理する。

「Too big to failは要はToo complicated to failなだけで、しかもそれは仲間内のトレーディングが絡み合いすぎたからであって一般消費者には関係がない。金融機関を破綻させるな、という人は、その金融機関の提供するサービス(の質の高さ)を懐かしんでいるわけではなく、破綻の影響を残念に思っているだけである」。

著者は言う。「われわれは金融を必要としている」(P338)。
「業務範囲が絞られ」「建設的な目的を持ち」「それにふさわしいガバナンスを有し」「家計と企業に奉仕するための」機能(要は決済と資産の管理・・・)に、コーポレートガバナンスとスチュワードシップの設計で回帰することは可能だ、と。

・・・はい。
で、ガバナンスが担保され、かつ無用な規制を外したときに、「業務範囲を絞り」続けることは企業にとって可能なのか、それは正しいのか。そんなこともふと思うのであった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会
感想投稿日 : 2019年1月1日
読了日 : 2019年1月1日
本棚登録日 : 2019年1月1日

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