すごい物理学入門 (河出文庫 ロ 3-2)

  • 河出書房新社 (2020年9月8日発売)
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感想 : 32
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【物理を知りたいと思っているあなたに贈る、最も軽やかで最も素敵で、あっというまに理解できる感動的な究極の名著。】
という触れ込みであるし、文庫で実質120ページと軽めの本なので読んでみることにした。

以前に読んだロヴェッリ氏の「時間は存在しない」は「ループ量子重力理論」という概念を説明する本だったが、本書もそうだった。
( [すごい物理学] とは [ループ量子重力理論] のことだったのかと納得 )

最初に「一般相対性理論」と「量子力学」の概要を説明しているのは「ループ量子重力理論」への前振りでした。
「超ひも理論」に関する書籍は多数あるが、「ループ量子重力理論」の本は少ないので多くの人に知って貰うための入門書としてはいいのではないでしょうか。

本書が易しいと感じるのは、概念だけ述べて理論の説明をしていないから。
アインシュタインの「一般相対性理論」についても、"空間も時間もゆがんでいる"程度のことしか言っていない。

説明は軽やかですが理解はできません。例えば以下のような説明。
「ループ量子重力理論によって記述される世界は、入れ物となる空間もなければ、事象が起こる時間軸も存在しません。
存在するのは、空間の量子と物質とのあいだの絶え間ない相互作用による基本的な反応だけです。」
空間も時間もない、と言った次の行で空間と時間が出てきている?何を言っているのか分かりません。

「ループ量子重力理論」についても、"空間も時間も存在しない特異点がある"という考えだと言っているだけ。
つまり、宇宙の始まりというとビックバンが出てきますが、ビックバンは「反跳」を起こす特異点だという理論の啓蒙書なんですね。

とりあえず読んでみて、触れ込みにある「あっという間に理解できる」人とは「(本気で)物理を知りたいと思っている」限られた人だと思う。
理科に興味がない人には変な教えの宗教か哲学の本を読まされているようで、読み通すことも苦痛かもしれません。
物理に限らず、「○○をあっというまに理解できる」本などありません。

物理の世界を感じたいなら「世界でいちばん素敵な物理の教室」とか子供向けの本がいいでしょう。
この本が面白いと感じて、もう少し知りたいと思った人には多田将さんの「すごい宇宙講義」もお勧めです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 科学
感想投稿日 : 2023年1月22日
読了日 : 2023年1月22日
本棚登録日 : 2023年1月7日

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