アイデンティティを確立することが発達の観点からは求められるが、この小説はそのことに疑問を投げかける。
私たちは「自分自身はこういう人間だ」と自分を過度に規定してしまい、それゆえに、その中で苦しんでいることがあるのではないだろうか。
同時に、他人に対しても「こういう人」とイメージを持っているがために誤解をしていることもあるのではないだろうか。
人は皆、自分の中にいろいろな「色(=自分の一側面)」を持っていて、それをTPOや相手に応じて変えている。
そういう意味では「本当の自分の色(=確固たるアイデンティティ)」などないのかもしれない。
そうであるなら、自分がなれる色を増やしていくことが生きるということなのかもしれない。
自殺は取り返しがつかないということを押し付けがましくなく描いている点も好評価。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
森絵都
- 感想投稿日 : 2013年1月31日
- 読了日 : 2013年1月18日
- 本棚登録日 : 2013年1月31日
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