こちらもブックトークの中の一冊。
92年の刊行以来数々の賞を受賞し、映画や演劇にもなっているし、確か夏の課題図書になったことも。
今年の夏もまた、日本中でどれだけの数の子どもたちがこの本を読んだことだろう。
初めて読んでからもう20年という月日が流れたことに愕然である。
20年の間に何があった?自分。この本でもっと感動したはずなのに。
成長と言えば良いのか鈍化と嘆くべきところなのか、まことに難しい。
話はあらすじを読んだだけで殆ど把握できるようなもので、予想はある意味裏切られない。
再読すると、「死」に向かっていく過程での細かな逸話を盛り込みすぎで、「あざといなぁ」と思いながらも、やはり3人の少年たちのかけがえのないひと夏には感じ入るものがある。
まさに作者の言いたいのはこの部分だろうから、狙いは外れていない。
死ぬとどうなるの?と、確かに私も親に質問したことがある。
何も見えないし何も聴こえないし、何も感じなくなると教わって、じいっと目を瞑って呼吸を止めシミュレーションしたことも。。。そして、案外怖かったものだ。
まるで氷河を渡っていくような、亡くなった後の父の手。母の手。
だめ、まだ逝ったらだめ、と無我夢中でその手を擦ったのも確かにこの私だ。
「死」は常に「生」の隣にある。
「死」を問うことを恐れてはいけないと、今改めて思う。
それは他ならぬ「生」への執着であり、ごく自然なことなのだから。
3人の少年が、人が死ぬのを見てみたいという思いつきは不純でもなんでもなく、そこから生まれた「老人観察」がいつしか「老人との交流」になっていく流れは、何度読んでも爽やかだ。
終盤、3人のうちのひとり(山下君)に「もうお化けは怖くなくなった。あの世に知り合いができたんだから」と言わせる場面は秀逸。
身近な誰かの「おくりびと」となったことのある者には、まさに代弁者のようなセリフだ。
もう何も怖くないのだから、「死」の日まで精一杯生きないとね。
生と死のみでなく、家族のあり方まで考えさせる内容で、それもこれも思春期だからこそこんなにも悩めるものなのだ。
そんな郷愁のような感情も味わいつつ読了。
でもやっぱり、少し盛り込みすぎ(笑)。
文庫の方はすごいレビュー数で、いささか怖気づいてしまった。それだけ人気の作品なのね。
- 感想投稿日 : 2014年9月29日
- 読了日 : 2014年9月20日
- 本棚登録日 : 2014年9月29日
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