夏の庭―The Friends

著者 :
  • 徳間書店 (2001年5月31日発売)
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本棚登録 : 984
感想 : 145
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こちらもブックトークの中の一冊。
92年の刊行以来数々の賞を受賞し、映画や演劇にもなっているし、確か夏の課題図書になったことも。
今年の夏もまた、日本中でどれだけの数の子どもたちがこの本を読んだことだろう。
初めて読んでからもう20年という月日が流れたことに愕然である。
20年の間に何があった?自分。この本でもっと感動したはずなのに。
成長と言えば良いのか鈍化と嘆くべきところなのか、まことに難しい。
話はあらすじを読んだだけで殆ど把握できるようなもので、予想はある意味裏切られない。
再読すると、「死」に向かっていく過程での細かな逸話を盛り込みすぎで、「あざといなぁ」と思いながらも、やはり3人の少年たちのかけがえのないひと夏には感じ入るものがある。
まさに作者の言いたいのはこの部分だろうから、狙いは外れていない。

死ぬとどうなるの?と、確かに私も親に質問したことがある。
何も見えないし何も聴こえないし、何も感じなくなると教わって、じいっと目を瞑って呼吸を止めシミュレーションしたことも。。。そして、案外怖かったものだ。
まるで氷河を渡っていくような、亡くなった後の父の手。母の手。
だめ、まだ逝ったらだめ、と無我夢中でその手を擦ったのも確かにこの私だ。
「死」は常に「生」の隣にある。
「死」を問うことを恐れてはいけないと、今改めて思う。
それは他ならぬ「生」への執着であり、ごく自然なことなのだから。
3人の少年が、人が死ぬのを見てみたいという思いつきは不純でもなんでもなく、そこから生まれた「老人観察」がいつしか「老人との交流」になっていく流れは、何度読んでも爽やかだ。

終盤、3人のうちのひとり(山下君)に「もうお化けは怖くなくなった。あの世に知り合いができたんだから」と言わせる場面は秀逸。
身近な誰かの「おくりびと」となったことのある者には、まさに代弁者のようなセリフだ。
もう何も怖くないのだから、「死」の日まで精一杯生きないとね。
生と死のみでなく、家族のあり方まで考えさせる内容で、それもこれも思春期だからこそこんなにも悩めるものなのだ。
そんな郷愁のような感情も味わいつつ読了。
でもやっぱり、少し盛り込みすぎ(笑)。

文庫の方はすごいレビュー数で、いささか怖気づいてしまった。それだけ人気の作品なのね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童書
感想投稿日 : 2014年9月29日
読了日 : 2014年9月20日
本棚登録日 : 2014年9月29日

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コメント 4件

だいさんのコメント
2014/10/01

>死ぬとどうなるの?

最近では、モロこのテーマの作品がないような気がする?ので、読み継がれているのではないですか?

nejidonさんのコメント
2014/10/02

だいさん、こんにちは♪
コメントありがとうございます!
なるほど、言われてみれば確かにそのとおりですね。
誰もが疑問に思うことのはずなのに、正面から答えようとしている作品がないのかもしれません。
少年たちの目を通して考えさせたというのも、新鮮だったのでしょう。
小学6年生と言う年齢もいいですね。

ちなみに先日のブックトークの場では、誰も読んだことのある子がいませんでした。
読むきっかけになれたかどうか、微妙です。。

だいさんのコメント
2014/10/05

nejidonさん
こんにちは

死とは、
身近な話題じゃなくなってしまったのかもしれませんね。

nejidonさんのコメント
2014/10/06

だいさん、こちらにもコメントをいただいてありがとうございます!
子どもたちが実に簡単に「死ね!」と罵りあったりするのですが、
それもまた「死」について考えたことも無い証拠かもしれませんね。
(あ、我が家の子の話ではありませんからね・笑)
なんたって「いのちの大切さ」について学校で教えなければならない時代です。
歪んでますよね。。。

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