戦火の馬

  • 評論社 (2011年12月1日発売)
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感想 : 64
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次から次へと劇的な展開で、着地点はあざとささえ感じるほど実に上手くいっている。
まるでアメリカ映画のようではないかと思って読んでいたら、とうに映画化されていた(笑)
2012年に公開されたスピルバーグ監督の【War Horse】という作品らしい。
知らないことは山のようにあるものだ。

そして、あざとさを感じながらも先が気になって読み進めてしまうのは、やはり面白いからだ。
飲んだくれの農夫に競り落とされたサラブレッドの運命。
ジョーイと名付けられ、農夫の息子であるアルバートの自慢の馬となる。
しかし牧歌的な交流の場面は、長くは続かない。
第一次大戦がはじまり、軍馬として召集され戦線へ。
そこで出会った様々なひとと馬と。そして過酷な戦いと。
ジョーイは再びアルバートと巡り合えるのか。
どこかで再会を信じてはいても、そこまでの道のりは容易ではない。

馬の視点から語ることで情緒的になりすぎず、かといって冷淡すぎることもない。
むしろ、敵も味方もなく公平に見ている馬の視点はとても新鮮で、それでよけいに
戦争の愚かしさが際立つようになっている。
登場人物の中には、善人もいればそうでもない人もいて、平等に訪れる「死」は、
情け容赦なく描かれる。
それは、戦線でジョーイの支えだったもう一頭の馬にしても同じ。
人が死ぬ場面よりも、この場面の方がぐっと胸に迫るのは、馬の目線で描ききっているからだろう。

ひとと馬の交流の部分が楽しいだけに、戦争の悲惨さがより浮かび上がる。
(有刺鉄線に絡む場面では、泣けた。あと、エミリーという少女の哀れさも)
読書感想文もきっと書きやすいだろう。
テーマも把握しやすく、アルバートと同世代にあたる中高生にはたぶん私も薦めてしまうかも。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童書
感想投稿日 : 2015年8月11日
読了日 : -
本棚登録日 : 2015年7月31日

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コメント 6件

だいさんのコメント
2015/08/13

>同世代にあたる中高生には
ジジババが読んだら、この時代にもどれますか?

nejidonさんのコメント
2015/08/13

だいさん、こんにちは♪
はい、年配の方にもお薦めですよ。
夏休みの読感文のためにこんな表現をしていますが、
幅広い年齢向きのように思われます。
第一次大戦が舞台ですから、この時代に戻れるかどうかは(笑)
明言できませんが、世代によって感想も違ってくるかと。
それも聞いてみたいですね。

vilureefさんのコメント
2015/08/14

こんにちは。

この映画、見に行きましたよ〜。
馬に人の交流を描いた感動作くらいの気持ちで見に行ったら、まあ辛くて辛くて。
途中で見るの嫌になっちゃいそうでした(^_^;)

原作は馬の視点なんですね。
ちょっと気になります。
あの重い気分がぶり返しそうで勇気がいるけど読んでみようかなぁ。

あ、ちなみにミュージカルになってますよね。
映画化より先かな??

nejidonさんのコメント
2015/08/14

vilureefさん、こんにちは♪
コメントありがとうございます!
おお、この映画をご覧になったのですか。
そして、辛い描写だったのですね。
うーむ、映画のほうは情緒的に作ってあるという意見がありますが、
そのあたりが辛く感じられたのかもしれませんね。
本書は、辛くはないです(笑)。
馬を通して語る戦記物なので、決して楽しいだけではありませんが、
映像よりは文章の方が柔らかいのでしょうね。
過剰な思い入れもなく、突き放しもせず、ちょうど良いスタンスかと思います。

ええ?ミュージカルもあったのですか?!
馬の中に人が入ったのかなぁ(笑)。

mkt99さんのコメント
2015/08/15

nejidonさん、こんにちわ。(^o^)/

自分も映画で観ました。
えええっ!というほどにこんなにも都合が良いものかというストーリーだったと記憶しています。
ちょっと「物語」し過ぎているところが、物語に浸れない理由のような気がしました。

アメリカ人ってこうゆうの好きなのかなって思ってしまいました。(^_^;

nejidonさんのコメント
2015/08/17

mkt99さん、こんにちは♪
コメントありがとうございます。
おお、やはりこの映画をご覧になったのですね。
本で読んでもかなり出来すぎなので、映画化となると少々興ざめかもしれません。
この原作を読んでから映画は、たぶん、見ません、ワタクシは。

アメリカ人て、こういうのが好き・・なのかもしれませんよ(笑)
Amazonで星五つだしファンの方も多そうなのでタイトルは伏せますが、
アメリカ映画離れの元になった作品というのが、私にはあります。
反面、真摯に作ってる作品もあるんですけどね。
となると、ここはやはり時代劇ですか(大笑い)!

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