次から次へと劇的な展開で、着地点はあざとささえ感じるほど実に上手くいっている。
まるでアメリカ映画のようではないかと思って読んでいたら、とうに映画化されていた(笑)
2012年に公開されたスピルバーグ監督の【War Horse】という作品らしい。
知らないことは山のようにあるものだ。
そして、あざとさを感じながらも先が気になって読み進めてしまうのは、やはり面白いからだ。
飲んだくれの農夫に競り落とされたサラブレッドの運命。
ジョーイと名付けられ、農夫の息子であるアルバートの自慢の馬となる。
しかし牧歌的な交流の場面は、長くは続かない。
第一次大戦がはじまり、軍馬として召集され戦線へ。
そこで出会った様々なひとと馬と。そして過酷な戦いと。
ジョーイは再びアルバートと巡り合えるのか。
どこかで再会を信じてはいても、そこまでの道のりは容易ではない。
馬の視点から語ることで情緒的になりすぎず、かといって冷淡すぎることもない。
むしろ、敵も味方もなく公平に見ている馬の視点はとても新鮮で、それでよけいに
戦争の愚かしさが際立つようになっている。
登場人物の中には、善人もいればそうでもない人もいて、平等に訪れる「死」は、
情け容赦なく描かれる。
それは、戦線でジョーイの支えだったもう一頭の馬にしても同じ。
人が死ぬ場面よりも、この場面の方がぐっと胸に迫るのは、馬の目線で描ききっているからだろう。
ひとと馬の交流の部分が楽しいだけに、戦争の悲惨さがより浮かび上がる。
(有刺鉄線に絡む場面では、泣けた。あと、エミリーという少女の哀れさも)
読書感想文もきっと書きやすいだろう。
テーマも把握しやすく、アルバートと同世代にあたる中高生にはたぶん私も薦めてしまうかも。
- 感想投稿日 : 2015年8月11日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2015年7月31日
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