ゴールディーのお人形 (末盛千枝子ブックス)

  • 現代企画室 (2013年11月11日発売)
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本棚登録 : 231
感想 : 26
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Amazonやブクログのレビューで、星五つがズラリと並ぶ佳作。
人形作りを生業とするゴールディーという女性に起きた、ある小さなお話。
モノ作りの真髄と仕事への情熱と誇りを、静かなテキストとモノクロの絵で語る。

人形作りと言っても、ゴールディーの場合は「無」からのスタート。
森で気に入った枝を拾い、それを人形の形に彫り、絵付けをして服を着せる。「無から有を生む」この作業を、ゴールディーはひとり心を込めて続けている。
ある日、必要な道具のために町に出たゴールディーは、ひとつのランプに心を奪われる。
それはこれまで見たこともない美しいものだった。。

最近孤独を推奨するような内容の本が多く、首を傾げていた私には、ある種納得の話。
何よりも先ず「より良く生きよう」という矜持が真っ先にあり、仕事はそれを形にして表わすもの。作中にある「どこかの誰かがきっと喜んでくれると信じて、一生懸命作ったのです」という言葉がそれで、ゴールディーの孤独も、その過程でたまたま生まれた副産物に過ぎない。ひとりでいたくて、この境遇になったわけではない。
理解し、支えてくれるひとはちゃんと存在する。
パン屋さんで出会った、ゴールディーのお人形を抱きかかえていた女の子がそうだ。
なんと豊かで充実した孤独だろうか。

ランプを手に入れたことで、仲良しの大工さん・オームスに美意識を否定されても、これからも信じる道を黙々と進もうと、そう思い直して立ち上がる彼女の姿がとても素敵だ。
お話の中では、ランプの作り手が夢枕に現れることになっているが、たぶんゴールディーだからこそ、モノを通して語ることも出来たのだろう。
作るからには、せめてこのくらい心を込めて仕事をしたいものだ。

「ゴールディーはとても幸せでした」という一行で終わる55ページのお話。
仕事に対する真摯な姿勢を持ち続けることが何よりも幸せであるという、当たり前すぎる話だが結末は温かい。こうであって欲しいという、読み手の期待を裏切らない展開。
「ジョコンダ夫人」の後なので星四つになったが、後書きまで含めてとても良いお話だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童書
感想投稿日 : 2018年9月14日
読了日 : 2018年9月10日
本棚登録日 : 2018年9月14日

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