新型コロナウィルスが流行している今、正に読むべき名著。この本がたった20日間で書かれたということに驚く。
さて、本作においてパンデミックをおこす「ヒュウガ・ウィルス」は、致死率99%を誇る凶悪なものである。しかしウィルスには善意も悪意もない。ウィルスは遺伝子の流動性を高め、ただ進化を媒介する役割を果たすだけなのだ。作中に登場する架空の向精神薬「向現」は、副作用のない完璧な薬物である。そしてこの薬物の精製にもウィルスの関係が示唆されている。つまりウィルスはある種、人類、はたまた生物全体への福音でもあるのだ。
現実問題と絡めると、ヒュウガ・ウィルスはその致死率等から考えて、コロナウィルスというよりもエボラに近い。だが、パンデミックというのはその原因に類似性が認められるのである。
その類似性の一つが、感染流行初期の情報統制である。ヒュウガ・ウィルスは政府の介入を受けない歓楽都市「ビッグ・バン」で発生した。政府の介入を受けないからというだけの理由ではないが、感染症の流行は隠蔽され、潜伏期間にある人々が世界中に広めてしまった。これは新型コロナウィルスにも大いに当てはまることであろう。
『五分後の世界』では、日本は戦争でしか世界と繋がっていない。それが感染流行を抑えられなかった一つの要因であると言えると私は思う。しかし現代は平和で世界と繋がっている。ならば今後の感染症対策には、平和の維持と情報の共有が必要を進めることが必要なのである。そのことをひしひしとか感じさせるのが本作だと思う。
てかUG兵マジかっけえ。
- 感想投稿日 : 2020年5月10日
- 読了日 : 2020年5月10日
- 本棚登録日 : 2022年10月29日
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