タイトル通り「ジェイン・エア」と「嵐が丘」を中心に、ブロンテ姉妹の来歴などを、多くの写真や肖像画、挿絵などと合わせて見やすく構成。敷居は低くなっているが、河野多恵子、小野寺健、植松みどりなどの執筆陣で固めていて、中身のレベルは低くない。
前半は2作のあらすじをまとめてあり、読んだことのない人にはかっこうのまとめとなっている。(読んだことのある人には不要でもある。)
その後、姉妹の生涯やイギリス小説のことなどにページが割かれる。
全体としては、シャーロットに重きが置かれている。
どちらかというと「ジェイン・エア」より「嵐が丘」のほうが劇的で女心をつかむストーリーかと思われるけれど、評価としては「ジェイン・エア」のほうが高いのかもしれない。
身分違い、両親が早くに亡くなる、孤児、養女、女教師、恋、命の恩人、病弱な妻を持つ紳士との不倫、確執、復讐、愛と憎しみ……今では定番とさえ言える乙女の大好きなアイテムがてんこ盛りである。
そして劇的な展開。乙女たちが、心をつかまれないはずがない。
オースティンとは対称的と言っていいのだろう。
オースティンの小説が日常とすれば、ブロンテ姉妹は非日常で、その悲劇性は甘美でさえある。
今回の私の発見。
「原稿発送からたった53日間で世界ナンバーワン小説『ジェイン・エア』は出版された」ということ。
ブロンテ姉妹は、病気で次々と兄弟が亡くなったり、結構不幸であったこと。(エミリも30歳で、姉妹で一番長生きしたシャーロットでさえ40前だ)
彼女らも当時の未婚女性の自活問題からは逃げられず、ガヴァネスを職業としていたこと。
彼女らに絵心があったこと。(なるほど、道理で、読んでいて風景が思い浮かぶ)
シャーロットはギャスケルと知り合いであったこと。
映画化されたものについてもまとめてあるが、欲を言えば、その後「ジェイン・エア」「嵐が丘」の影響下で生まれた作品(映画に限らず)にも触れてもらいたかったかな。
さすがにTVドラマ「愛の嵐」などには触れていないのはともかくとして、ケイト・ブッシュ「嵐が丘」には触れてもよかったような。
- 感想投稿日 : 2012年1月23日
- 読了日 : 2012年1月23日
- 本棚登録日 : 2012年1月23日
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