仕事のなかの曖昧な不安: 揺れる若年の現在 (中公文庫 け 2-1)

著者 :
  • 中央公論新社 (2005年3月1日発売)
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感想 : 16
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ニート・フリーター等の若年労働問題の第一人者がその筆に託した渾身の力作です。
主観的判断や若者の心理状態からのアプローチを排し、徹底した統計データに基づく分析が貫徹している珠玉の本です。
その分析から、『今の就業構造は、団塊世代を養うために若年層の雇用が確保できない』と断言し、心に問題がある若者が増えたとか、根性の無い人が増えた等のワイドショー的な解説を否定し、そもそも企業からの就職試験自体の門が極めて狭くなっている、また試験自体をさせない(採用無し)『若年リストラ』の解決を訴えています。
日本の就職システム、新規学卒者一括採用に警鐘すると共に労働時間の二極化の是正を真摯に議論しなくてはならない…。労働時間の二極化については、統計データからは、『トータルで見れば労働時間は減少しているが、年間250日以上就業している有業者のうち、ふだん1週間就業時間が60時間の割合』は劣悪な状態に陥っているという凄惨な結果が導かれ、著者はこれを仕事格差と称して問題を提起しています。
転職にも言及、より良い転職先を手に入れた人は職場以外の友人・知人の存在から有益な助言を得ている結果を踏まえ、人的ネットワーク(特にあまり深く関わりがない『弱い丑帯(Weak Ties)』)の構築を奨励しています。
これはネットワーク科学モデルからも指示を得ています。
章を列挙すると、
第1章 雇用不安の背景で
第2章 「パラサイト・シングル」の言い分
第3章 フリーターをめぐる錯誤
第4章 世代間対立を避けるために
第5章 所得格差、そして仕事格差
第6章 成果主義と働きがい
第7章 幸福な転職の条件
第8章 自分で自分のボスになる
第9章 17歳に話をする
上記の9章に分け、『雇用』を基軸にしてその直接・間接問題を分析しています。
興味のある人はどうぞ!

僕の評価はSです!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年9月7日
読了日 : 2009年12月2日
本棚登録日 : 2011年9月7日

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