「尖閣問題」とは何か (岩波現代文庫)

著者 :
  • 岩波書店 (2012年11月17日発売)
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感想 : 18
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野田政権による国有化以後中国との関係を決定的にこじらせてしまった尖閣列島ですが、実際のところなんでここまで中国との間で意見の対立があるのか、きちんと知っておきたくて読んでみました。
読んでみて、納得がいきました。たしかに国際法上の所有権が日本にあることは確かなのでしょうが、台湾を植民地化したのとほぼ同じタイミングで日本への編入手続きが行われているため、台湾にとってはその日本への帰属は「植民地化の象徴」とみられていることで、それは韓国にとっての竹島も同じだとのこと。これではたしかに、国際法上日本の所有であることは間違いないと言っても、感情的に納得してもらうのは非常に難しそうです。しかも、アメリカが沖縄返還前には尖閣列島も自ら管理しておきながら、沖縄返還時に尖閣列島帰属についてはアメリカは関知しないと言い、以後その立場を継続しているというのも、たしかに中国と台湾については「領土問題が存在する」と主張するには十分過ぎる状況だとよくわかりました。
北方領土や竹島問題の歴史的経緯にも触れられていて、問題の全体をとても明確に知ることができたのは収穫でした。
ただ、後半で筆者の提案する解決策については、さすがにちょっとアメリカを感情的に敵視しすぎている感じで、ややついて行けない部分がありました。が、それなりに納得度は高いです。少なくとも、今の国の外交政策よりは建設的な提案のように思えました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治・行政
感想投稿日 : 2013年9月1日
読了日 : 2013年9月1日
本棚登録日 : 2013年8月27日

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