好きだなあ、フロスト。何でこんな、二言目には(いや一言目から)下ネタセクハラ発言ばっかりのさえないオヤジが好ましいのか、自分でもわからん。この新作は本当に楽しみにしていて、一気読みできる日まで寝かせておいたのだ。
で、フロストは相変わらずフロストだった。捜査は行き当たりばったり、大嘘ついて自白を迫り、くだらなーいジョークを連発し、不眠不休のワーカホリック、よれよれの風体で顰蹙を買いまくる。このシリーズはどれもいわゆるモジュラー型で、大小取り混ぜいろいろな事件が起こるのだが、今回はシリーズ最長だそうで、次から次から事件のてんこ盛り、デントン署は大忙しだ。
もちろん最後にはどれも解決するわけだけれど、別にフロストの推理がさえていたからとか、勇敢な行動があったから、というわけではない。そこが面白い。勝手に犯人の方から自白してくれたり、棚ぼた式に一丁上がりとなるものもあったりして、ニヤニヤしてしまう。どの「真相」もなるほどと思うもので、まったくうまい。
もちろん、そうして「解決」するのはちいさなヤマで、娼婦を狙った連続殺人事件と、子どもの行方不明事件はそういうわけにはいかない。ここではフロストの直感と、絶対に諦めないブルドーザーのごとき突進力がものを言う。今思ったのだが、あの刑事コロンボをうんと下品にして、名推理を抜いて、後先考えない行動力をくっつけたら、フロストのイメージに近いかも。いやあ、とんでもないな。
それにしても、読むことそのものがこれほど楽しいミステリーもそうはない。大小の事件の決着がどうなるかという興味だけではなくて、フロストの言動一つ一つに、おかしさと人間味があって魅力的だ。フロストが、殺された旧知の売春婦セアラの若い日のことを語る場面と、九死に一生を得たリズ・モード警部代行に示した思いやりが心に残った。
- 感想投稿日 : 2013年10月23日
- 読了日 : 2013年10月23日
- 本棚登録日 : 2013年10月23日
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