劇団を主宰する巧くんと、彼の劇団がつくった借金を2年の期限付きで肩代わりした兄、司さん。
前作よりも劇団のお金に対する感覚が現実的になってきて、無駄も減ってきた。お金だけでなく、巧が団員の出番に気を遣いながら書いていた脚本も無駄がそぎ落とされてますます面白くなってきた。
このまま、とんとん拍子に完済の日を迎えられるのかと思っていると、次々に小さな事件が起こって・・・。
どいつも、こいつもしょうがねーなーと思うようなことだけど、現実にはそういうことが小骨のように引っかかるものなのだよね。
毎日は、まるで昨日と同じように続いていきながら、ほろ苦さや辛さを含むできごとがあって、ときおり訪れる甘酸っぱい気持ちや湧きあがるような喜びで彩られている。
もちろん、それはたまになんだけど。だから、いいんだけどね。
そういう彩りをより鮮やかに読ませてくれる読書の楽しみ。
有川さんは、人の弱さや関係性からくる辛さはありつつも、いい人たちが集まるコミュニティーを描いてくれる。ひとりひとりが魅力を持ち、君とお近づきになりたい、お話ししたいという気持ちにさせてくれる。
それは表面的な人物造形による長所ばかりが並んでいるのでは決してなくて、その人の持つ弱さや短所と思えるような側面さえもかわいらしさに見えてくる。
結局有川さんの人に対する視点の温かさによるものなのかもしれない。
ときおり有川さんや三浦しおんさんのお話に浸りたくなるのは、
ちょっと人を責めたくなってしまう自分の弱さを受け止めて、
どいつも、こいつも、いいやつだね~と、
人を信じて、しゃんと生きていきたいという気持ちの表れなのかもしれない。
- 感想投稿日 : 2013年8月21日
- 読了日 : 2013年8月19日
- 本棚登録日 : 2013年8月20日
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