あしながおじさん (少年少女世界文学館 12)

  • 講談社 (1986年11月14日発売)
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本棚登録 : 34
感想 : 4

『あしながおじさん』は「名乗り出ない金銭援助人」程度の認識しかなかった。手紙形式の物語だと初めて知ったし、児童文学だから主人公は子どもだと思っていたから17歳でびっくりした。とはいえ少女漫画なら17歳のヒロインは普通だし、作中で描かれるアメリカの大学生活から未知の世界への憧れを抱けるかもしれない。

なじみのない単語や比喩には赤字で説明書きがしてあるので、子どもだけでもつまずくことなく読み進めることができる。図説もあるので、きちんとそのものを想像して読むことができる。
読む人の年齢や知識によっては、この説明部分が過剰に感じられるかもしれない。けれど「主人公があしながおじさんに書いた手紙」という形式である以上、手紙の内容を読者と共有することが重要なので必要だと思う。赤字ではあるが細くて小さいので、邪魔にはならない。
説明書きは「言葉の意味の説明」ではなく「同じ意味の言い換え」の場合もあるので、創作者なら語彙を増やす助けになりそう。

支援してもらっているからといい格好をしようとすることは一切なく、「自分はいい人間ではない」だの「(おじさんに向かって)おばかさん」だの言いたい放題のジュディがすごい。それでも手紙はずっと丁寧な口調で書かれているから嫌な感じがせず、飾らない=素直で好感が持てる。手紙の頻度や文章量からジュディのご機嫌具合や何に心を動かされたのかがわかるのも楽しい。
最初はあしながおじさんに反対されたことは悔しく思いつつも従っていたジュディが、年を経て反抗することに成長を感じた。そりゃ17歳→21歳だからね…。
最後の最後でジュディにあしながおじさんの正体が明かされるが、手紙形式を最後まで貫いている=すべて「ジュディが見聞きして感じたこと」だから、これまでのおじさんの行動の真意まではわからないままでモヤモヤが残る。「相手の気持ちを想像する」という教材や話題としてはいいのかも?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年10月6日
読了日 : 2022年10月6日
本棚登録日 : 2022年10月6日

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