今度も初読みの作者さん。
フォローしている方々のレビューに惹かれて買ってきたが、皆さんのお陰で今まで知らなかった作者さんに会えるのはありがたい。
この本もとても面白かった。
冒頭、滋賀の山里の集落が襲われ、いきなり巻き込まれ型逃亡劇が始まる。この“いきなり”“巻き込まれ”で話が動きだすというのがいいねえ。
そこからは、当事者だけでなく警察や記者も入り乱れ、敵味方の見分けもつかない中、〈梟〉の一族という特殊な集団の中で育ったとはいえ普通の高校生だった主人公・史奈が見聞き体験することに一緒に翻弄される。
真相に近づいていけば、今度はその一族が持つ特異な体質に対する遺伝情報を巡るサイエンスミステリーの体。
怪しげな研究所や警備会社が跋扈して、睡眠のメカニズムが語られたり、〈カクレ〉や〈シラカミ〉が現れたり、ここでもまた何が正解か分からず、話の行き先を図りかねる展開に惹き込まれる。
最後は再び山里での忍者もものかわのアクション劇。
滋賀県に住んでいたことがあるが「河内風穴」のことは全く聞いたことがなかった。ネットで写真を見ただけだが確かにそれらしく凄そうなところだなあ。
一族の持つ身体能力が出し尽くされたようには見えなかったのがやや不満だが、最後まで次から次へと楽しむことは出来た。
読み終えて見れば、普通の高校生だった史奈が一族をまとめる統領になるまでの成長譚になっていて、終章の儀式の場面はなかなかに厳か。
いったん収束を見た話だが、史奈の偽物の正体やお堂の中の書物の読み解きなどまだまだ奥は深そうで、続きが楽しみ。
- 感想投稿日 : 2024年1月12日
- 読了日 : 2024年1月10日
- 本棚登録日 : 2024年1月12日
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