私の中ではちょっぴりブームな作者さん。今度は2021年本屋大賞第3位のこの本。
ある日、高校に迷い込んできた一匹の子犬。ある生徒の名前をとって「コーシロー」と名付けられたその白い犬は、入学しては卒業していく生徒たちとともに学校での生活を送っていく。
昭和から平成に続く時代を背景に、コーシローが見つめ続けた、高校生たちの恋や友情、迷いや決意、秘められた思慕やお互いの秘密などが描かれるが、どの話にもその年頃に特有の心情が露わにされ、切なかったりほろ苦かったり甘酸っぱかったり、高校生の頃に戻ったような気持ちになった。
『ただ、何もかも……もっと自分が大人だったらと思うよ』という光司郎の言葉には、口に出せない想いへのもどかしさがたっぷりで切ない。(第1話)
学校生活では全く接点がなかった堀田と相羽がF1を通じてつながる様は、その年頃でしかできない無鉄砲さで、なんだか懐かしい。(第2話)
災厄と身近な人の死に効率が悪い生き方を選んだ奈津子(第3話)や、それぞれのロッカーの秘密を共有する鷲尾と詩乃(第4話)の姿にも好ましいものを感じた。
12年間高校で暮らしたコーシローが教師となって母校に戻って来た優花の膝の上で、花々にお菓子のように甘く優しい色がついているのを見る終章の場面にじんとする。
最終話、母校の創立100周年の式典に集まった登場人物たちの卒業後の姿に、それぞれがかつての思いを胸にしっかり生きてきたことが知れ、とても温かい気持ちになった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
2024年読んだ本
- 感想投稿日 : 2024年5月3日
- 読了日 : 2024年5月1日
- 本棚登録日 : 2024年5月3日
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コメント 3件
マメムさんのコメント
2024/05/03
ニセ人事課長さんのコメント
2024/05/04
マメムさんのコメント
2024/05/04