犬がいた季節 (双葉文庫 い 64-01)

著者 :
  • 双葉社 (2024年1月10日発売)
4.37
  • (85)
  • (59)
  • (15)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 1008
感想 : 57
5

私の中ではちょっぴりブームな作者さん。今度は2021年本屋大賞第3位のこの本。
ある日、高校に迷い込んできた一匹の子犬。ある生徒の名前をとって「コーシロー」と名付けられたその白い犬は、入学しては卒業していく生徒たちとともに学校での生活を送っていく。

昭和から平成に続く時代を背景に、コーシローが見つめ続けた、高校生たちの恋や友情、迷いや決意、秘められた思慕やお互いの秘密などが描かれるが、どの話にもその年頃に特有の心情が露わにされ、切なかったりほろ苦かったり甘酸っぱかったり、高校生の頃に戻ったような気持ちになった。
『ただ、何もかも……もっと自分が大人だったらと思うよ』という光司郎の言葉には、口に出せない想いへのもどかしさがたっぷりで切ない。(第1話)
学校生活では全く接点がなかった堀田と相羽がF1を通じてつながる様は、その年頃でしかできない無鉄砲さで、なんだか懐かしい。(第2話)
災厄と身近な人の死に効率が悪い生き方を選んだ奈津子(第3話)や、それぞれのロッカーの秘密を共有する鷲尾と詩乃(第4話)の姿にも好ましいものを感じた。

12年間高校で暮らしたコーシローが教師となって母校に戻って来た優花の膝の上で、花々にお菓子のように甘く優しい色がついているのを見る終章の場面にじんとする。
最終話、母校の創立100周年の式典に集まった登場人物たちの卒業後の姿に、それぞれがかつての思いを胸にしっかり生きてきたことが知れ、とても温かい気持ちになった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2024年読んだ本
感想投稿日 : 2024年5月3日
読了日 : 2024年5月1日
本棚登録日 : 2024年5月3日

みんなの感想をみる

コメント 3件

マメムさんのコメント
2024/05/03

初コメです。
最後の式典まで伏線と青春が詰まった素敵な作品ですよね^_^
伊吹有喜さんの作品は『犬がいた季節』だけ読了なので他の作品でオススメがあれば、教えて頂けると嬉しいです♪

ニセ人事課長さんのコメント
2024/05/04

マメムさん
コメントありがとうございます。
この作者さん、ずっと前に読んだ「ミッドナイト・バス」も良かったのですが、最近のマイブームは「雲を紡ぐ」で火がついて、「なでし子物語」で燃え上がりました。
この前読んだ「四十九日のレシピ」も良かったです。
次はこの本の解説の書店員さんが推されていた「彼方の友へ」を読もうと思っています。

マメムさんのコメント
2024/05/04

ニセ人事課長さん、お返事ありがとうございます。
色々とご紹介ありがとうございます。『雲を紡ぐ』は話題作でしたね♪
『なでし子物語』はシリーズ作品みたいですが、あらすじが気になったので読んでみようと思います!!
『彼方の友へ』のレビューも楽しみにしています^_^

ツイートする