心経

著者 :
  • 河出書房新社 (2021年7月23日発売)
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本棚登録 : 84
感想 : 12

中国共産党×五大宗教(仏教・道教・カトリック・プロテスタント・イスラム教)というヘビーなテーマだが軽快な文体でユーモアたっぷりに描かれておりサクサク読める。
宗教でさえも共産党をトップとした権力争いに絡め取られ、もはや神々は認知症を患っており人々を救えない…という結末はある種予想通りではあるが、この状況下でこの結末を描ききる著者の凄みに圧倒される。
主人公の18歳の尼僧と20代の若い道士が翻弄される様子は非常に痛々しく読み進めるほどに辛くなるが、だからこそ最後に神はもう人間を救えないという悟りに説得力がある。
翻訳版がまっさきに刊行されるのは日本で、著者あとがきにも日本ではより多くの人が共感してくれたらとあるが、日本でも、もはや信仰は物語の上でしか成り立たないという点など共感できる部分は非常に多いのではないかと思う。
多神教文化である日本と、欧米圏では綱引きシーンやラストのマンション神様大集合の場面はきっと感じ方が大きく異なるのではないかなと思う。(一神教文化で見たときのこの場面の強烈さを味わってみたかったなと笑)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年4月10日
読了日 : 2022年4月9日
本棚登録日 : 2022年4月9日

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