患者の話は医師にどう聞こえるのか

  • みすず書房 (2020年11月11日発売)
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本書の訳者は知っている人は知っている行動療法の専門家で動機づけ面接でも知らない人はいないくらいの人である。一方、訳者は精神・心理関係以外の翻訳書(医師が描いたノンフィクション)もみすず書房から数点出しているが、どの本も秀逸である。また訳もこなれて読みやすい。本書はまさに医師と患者のコミュニケーションに関する本で、いかにそれがお互いにずれやすいかを著者の経験を踏まえて書かれ、それには科学的根拠もあることを示された本である。訳者はあとがきで、動機づけ面接をされている方にこそ読んでほしいということであったが、まさに日々の臨床の悩みに応えてくれる内容が詰まっている。訳者がその理由として挙げた個所とは違うが、私が印象に残った部分は、医師が医学的問題のみに焦点を当てて会話を支配すると服薬アドヒアランス不良リスクが3倍、社会的問題に患者が置かれている時に、その問題を避けると服薬アドヒアランスリスクが6倍になる、とのこと。まさにSDHの視点を避けてはいけないことが医療コミュニケーションの部分でも反映されているということである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: メディカル
感想投稿日 : 2021年9月9日
読了日 : 2021年9月9日
本棚登録日 : 2021年9月9日

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