跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること

著者 :
  • イースト・プレス (2014年9月9日発売)
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感想 : 12
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東田直樹さん、一流の作家であり、一流の詩人です。堪えきれず、泣かされたところもありました。

〈本から〉
僕には、人が見えてないのです。人も風景の一部となって、僕の目に飛び込んでくるからです。山も木も建物も鳥も、全てのものが一斉に、僕に話しかけてくる感じなのです。それら全てを相手にすることは、もちろんできませんから、その時、一番関心のあるものに心を動かされます。引き寄せられるように、僕とそのものとの対話が始まるのです。それは、言葉による会話ではありませんが、存在同士が重なり合うような融合する快感です。

もし、僕が死んで魂だけが残るとしたら、風のように世界中を移動するでしょう。人であることから解き放たれた瞬間、進化を超えて、本当の自由を手に入れるのだと思います。

「助け合い」は、人と人とのあだだけではなく、ひとりの人間の肉体の中でも、お互い、尊重し、譲り合うという行為が行われているのではないでしょうか。

水は僕にとって、故郷のような存在です。

治したいと思っているのに、注意をされても直せない人間が、この世に存在するのです。

人の話を黙って聞く、こんな苦行を続けられる人間が、世の中にどのくらいいるでしょうか。

人生にとって重要な学びはふたつあるのではないでしょうか。ひとつ目は、勉強をして、考える力を身につけること。ふたつ目は、自分の幸せに気づくことです。

僕は、沈みゆく太陽を見つめながら、今日という日に感謝します。この気持ちは、誰かに教えられたわけではない気がします。僕という人間を生かしてくれている全ての奇跡と愛に対する畏敬の念だと思うのです。

夕日の美しさに感動するとともに、なぜか寂しい気持ちが込み上げてきた僕は、泣きたくなるような気持ちをこらえます。自分の心の隅々まで光が当たり、どうしていいのかわからなくなったのです。

無駄に見える行動の中に、心のよりどころがあるというのが、何だか人間らしいと思うのです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 能力発見・自己改革
感想投稿日 : 2022年2月21日
読了日 : 2022年2月22日
本棚登録日 : 2022年2月21日

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