ひらけ駒!(1) (モーニング KC)

著者 :
  • 講談社 (2011年3月23日発売)
3.70
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本棚登録 : 374
感想 : 47

□あらすじ□

宝は小学4年生の男の子。

最近 将棋にハマって、寝ても醒めても将棋三昧の日々を過ごしている。

実力もなかなかで、順調に昇級を重ねるなど、強くなる手ごたえみたいなものも感じている。

一方、宝の母もそんな宝に驚きつつ、自身もあまりに将棋に夢中な宝に感化されてちょっとだけ将棋の世界を楽しんでいる。

強くなるだけじゃない ひとと対戦するだけじゃない 「将棋」という世界の持つ奥深い楽しさをコッソリ覗けるハートフル将棋ストーリー



□レビュー□

シンプルで読みやすい作風に騙されそうになりますが、これはすごい漫画です!

今までのボードゲーム漫画(それは将棋でも囲碁でもマージャンでもなんでもいいんですが)ってどうしても「まだその競技をやったことのない…もしくはその競技で天才といわれる人間がその競技でのぼりつめていく姿を描いた漫画」ってことになって、なんというか 「血は流さないバトル漫画」になるのが通例だったのですが、この「ひらけ駒!」は違います。


将棋を始め、どんどん強くなっていく自分を楽しんでいる…ある意味すごく真っ当な(笑)将棋の楽しみ方をしている息子の宝の成長譚を描きつつ、将棋は殆どズブの素人だけど宝を介することで「将棋界」というちょっぴり特殊ででも楽しい世界を垣間見ることを楽しんでいる宝ママ、ふたつの視点で「将棋」の楽しさ、奥深さをのぞくことができるのです。

特に、この漫画が画期的!と思うのは「将棋を指すことそのものじゃなくて、将棋界という世界の人間関係や特殊性を楽しんでいる」宝ママの存在。


彼女は将棋は殆どさせないし、ルールも完璧にわかっているのかアヤシイ(笑)とさえ思う素人なんですが 将棋の本を読んで「穴熊囲い」の戦法を解説するページに「ニホンアナグマ」の写真が載っているのを見てクスクス笑ってみたり(確かに将棋の戦法ってわけのわからないもしくはクスリと笑える名称だったりすることあるんですよね…特に子供向けの教本は、古めかしい言葉とかの場合過剰じゃねーの!?とすら思える丁寧さで名称の由来とかを解説してあったりするのでオカシイ)、懐かしい「将棋世界」(わからない方のために解説すると、将棋協会が毎月出している機関誌で将棋界の新聞みたいなもの。全ての棋士の試合結果や、将棋ファン向けに詰め将棋のコーナー、新手の検討なども載っています。将棋好き必携の書!)を読んで今は立派な竜王の棋士が若かりし頃はスマートなイケメンだったことに驚愕したり(今は見た目はただのオッサン)する。


ちなみにこれらのエピソードや作中に登場する棋士は全て実名なので、「ひらけ駒!」を読めばちょっとだけ、プロの将棋の棋士がどんな人なのかがわかります(笑)


将棋界っていうのはとてもユニークな人が多いので 将棋、というゲーム自体は意味不明でも 好きな棋士を応援したり 将棋界に残るエピソードを紐解くだけでもとても楽しめる世界。


「ひらけ駒!」はそんな 「ゲームとしてだけじゃない 将棋界という世界そのものの面白さ」を発見できる楽しい漫画です。


将棋ができない方も、宝ママになった気分で、宝を応援しつつ将棋界という世界を覗いてみてはいかがでしょうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 南Q太
感想投稿日 : 2011年3月28日
読了日 : 2011年3月28日
本棚登録日 : 2011年3月28日

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