ろまん燈籠 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1983年3月1日発売)
3.76
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本棚登録 : 1443
感想 : 102
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5人兄弟のリレー小説という形式の表題作「ろまん燈籠」を始めとした短篇集。
「ろまん燈籠」はとある5人兄弟がリレー形式で小説を執筆するのですが、物語の序盤で其々の性格や好みの文学について等の前情報があるので、その知識を踏まえて読むと「こういう風に繋げるのか、何となくわかる」「性格出てるなあ」など感じながら読み進めることが出来て面白かったです。5人其々に個性があるので、小説自体がどのような結末へ向かうのかという楽しみもありました。
其々異なった文体でロマンチックであったり怪奇的であったりと、ひとつの物語で様々な表現を試みた太宰の手腕にも驚きました。
「みみずく通信」では私の地元の新潟市を訪れた際の出来事が描かれており、昔の火災で古町が大打撃を被りお堀も今は埋め立てられてしまいましたが、今尚あるイタリア軒が登場したり、かつては砂丘だった旧制新潟高校周辺や、その間には太宰と交流のあった同じ無頼派の坂口安吾の実家もあることを思い出し、新潟の歴史に触れることが出来て面白かったです。
基本的に戦時下の短篇集ですが、戦々恐々とした雰囲気や毒々しさもなく、いつも通りの太宰の自虐もユーモアがあって思わずクスッと笑ってしまえる軽快な短篇集でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年10月13日
読了日 : 2018年10月13日
本棚登録日 : 2018年9月8日

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