まあ、おかしな本である。しかし、不真面目ではない。
男性のオーガズムを追求するAVレーベル「マザーズ」の主宰・二村ヒトシ、上野千鶴子ゼミ出身の社会学者でBL(ボーイズラブ)研究の金田淳子、『婦人公論』編集部出身で情報番組「とくダネ!」の月曜コメンテーターとしても知られるエッセイスト・岡田育。この3人が、男性の性的快楽、その可能性の中心を探究する。
結論から言えば、男性は自分でコントロールできない受動的な快楽に慣れていない。慣れていないから怖れ、遠ざける。それはときに、多様な快楽を初めから排除し、また異端視する規範となって、男性の性的自由を随分と狭めている。場合によっては、女性や同性愛者への無理解に基づく偏見や蔑視にも繋がっている。
そこで、乳首や前立腺への即物的な刺激でスイッチを入れ、制御不能な快楽に身を委ねてみたならば、男性はより自由に解放され、性的にも社会的にも得るものが大きいと説く。そのためにいくつもの体験談や資料が紹介され、また、男性の性を自由に描くBLの先見性が再発見される。
これは、セックス(身体)の解放を通じて、ジェンダー(規範)からの解放を促す、社会変革の方法論を提示した本として読める。もちろん、ただのエロ話として読んでもおもしろい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2015年8月9日
- 読了日 : 2015年4月27日
- 本棚登録日 : 2015年4月19日
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