異文化マネジメントの専門家が、国毎のビジネス敢行の違いを8つの指標を用いて分かりやすく解説した書。海外駐在者や国際ビジネス担当者に必須であるのはもちろんのこと、ドメスティックな仕事人にも、日本人のクセや常識を見つめ直すきっかけを与えてくれる良書。
8つの指標は、
①コミュニケーション…ローコンテクスト vsハイコンテクスト
②評価…直接的なネガティブ・フィードバック vs間接的なネガティブ・フィードバック
③説得…原理優先 vs応用優先
④リード…平等主義 vs階層主義
⑤決断…合意志向 vsトップダウン式
⑥信頼…タスクベース vs関係ベース
⑦見解の相違…対立型 vs対立回避型
⑧スケジューリング…直線的な時間 vs柔軟な時間
本書でなんといっても興味深いのは、それぞれの国の過去の歴史が現代の人々の行動に色濃く影響を残している点。例えば、
ロシア人に「行間に意味を込め行間に耳を傾けると同時にネガティブ・フィードバックはキッパリと直接的に行う」傾向があるのは、「共産主義下では、よそ者は敵でした。誰を信頼できるか、誰から当局に突き出されるか、誰に裏切られるかわからなかったのです。だから私たちはよそ者には強い調子を保って距離を置きました」という歴史的背景がある。
ローマ人は広大な帝国を支配するため強力な中央集権体制を敷いたため、「ローマ帝国の影響下にあった国々(スペイン、イタリア、そして、度合いは低いもののフランス)は残りの西欧諸国に比べて階層主義的な傾向にある」
世界で最も初期に民主主義社会を築いた「ヴァイキングに大きく影響を受けている国々は、現在でも常に世界で最も平等主義的で合意志向を持つ文化のひとつに数えられる」
「おそらく孔子の遺産によるものだが、中国から韓国や日本を含め東アジアの社会では、リーダーシップに対して家父長的な見方を持っていて、それが西洋人たちを困惑させている」
アメリカ人が即断即決を好む(そして軌道修正を厭わない)のは、西部開拓時代の人々にとって成功は、「誰よりも早く着いて懸命に働くことが何より重要で、その上で大切なスピードを追求する過程でのある程度の失敗はやむを得ないと考えられるかどうかにかかっていた」ため。
実に面白い!
- 感想投稿日 : 2022年1月20日
- 読了日 : 2022年1月19日
- 本棚登録日 : 2022年1月16日
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