終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? (2) (角川スニーカー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店 (2014年12月27日発売)
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感想 : 16
4

1巻のレビューを書いてから約1年半が経ち、ようやくこの2巻のレビュー。そして相変わらずのタイトルとの落差……。
アニメ版を観ているので、話の流れは大体分かってはいるものの、それでも切ない気持ちになります。

地上世界が「獣」と呼ばれる謎の生物に支配されたため、空中に浮かぶ浮遊都市に逃げた生き残った人々。
しかし獣は時折その浮遊都市近くにも姿を現し、彼らを倒せる武器を使えるのは「妖精族」である一部の少女たちだけ、という世界観のファンタジー。

獣との戦いのため死ぬ覚悟を決めつつあったクトリという少女。そんな少女が出会ったのは、人間種族として唯一の生き残りとされるヴィレムという青年でした。そしてクトリは徐々にヴィレムに惹かれていくものの……

戦いのため自分の命がどうなるか分からない。だからこそクトリの恋愛感情は、どこまでも真っ直ぐに描かれます。
「遠回しなやり方はしない」そう語るクトリの心情は本当に意地らしいな、と思う反面、その裏には、明日がどうなるか分からない、そうした悲壮な考えがあるからこその言葉なのだと思うと、また切なくもあり……

そしてヴィレムの想いもまた切ない。かつては地上で戦いつつも、今は少女たちに戦い方を教えるくらいしかできず、戦いに向かう彼女たちをただ待つことしかできない。そうした心の揺れが、しっかりと描かれます。

そして妖精たちを待つのは、戦いの過酷さだけではありません。この巻になって新たに明かされる妖精たちの真実は、戦いの結果うんぬんを超えた残酷なものでもありました。
クトリが脈絡のないイメージに囚われていく描写は、読んでいるこちらも不安になるような不気味さと、戻れないところに進み始めている、という予感を抱かせます。

人類が(ほぼ)滅亡し、妖精やゴブリン、トロール、あるいは獣人といった種族が暮らすという世界観なのですが、彼らの文化や政治といったものが、正義のありかたといった深遠なものを浮かび上がらせているのも、また好印象。
大筋のストーリーは悲恋ものなのですが、世界観はタイトルに合わず(?)きっちり練られている印象なので、細かいエピソードもしっかりと読ませます。

最近のラノベレーベルのファンタジーシリーズには珍しい、しっとりと展開する作品。この後の展開も既に知っているのですが、それでもやはり読み込んでしまいます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF・ファンタジー
感想投稿日 : 2020年2月23日
読了日 : 2020年2月20日
本棚登録日 : 2020年2月20日

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