第三巻に入り物語のスケールがかなり大きくなりました。
これまで主に清国内から語られてきたストーリーですが、この巻あたりから日本人やアメリカ人ジャーナリストが登場します。それによってアヘン戦争以降、列強の脅威にさらされる清の姿というものが、外の視点からも描かれていきます。
海外の脅威にさらされる一方、宮中内の政争もより苛烈さを増していく。これまでの中心人物だった春児や文秀の出番が減ってしまったのが少し寂しくはあったのですが、陰謀渦巻く国内・国外政治のドラマはまた違った読み応えを与えてくれました。
歴史のうねりの中で、登場人物たちが時には自分たちの立場や勢力拡大、あるいは保身のために、あるいは理想や夢を持ち、それを人に託し、あるいはただただ純粋に人と国を憂い祈る。様々な思いが交差し描かれていきます。
大枠としてはこの巻は歴史・政治の陰謀、策略の要素が強かったと思うけど、要所要所でこうした清濁合わせた人の思いが描かれ、言葉が紡がれ、それによってストーリーが単にドロドロとしたものだけでは終わらないのが、印象として良かったです。
歴史物だとストーリーが歴史をたどるだけに終わってしまう印象になるものもあるけれど、この蒼穹の昴の3巻はそれを感じませんでした。そこもまた作品の引力や浅田次郎さんのストーリーテラーっぷりが現れていると思います。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
時代小説・歴史小説
- 感想投稿日 : 2022年12月25日
- 読了日 : 2022年12月17日
- 本棚登録日 : 2022年12月17日
みんなの感想をみる