イノベーターの条件―社会の絆をいかに創造するか (はじめて読むドラッカー (社会編))

  • ダイヤモンド社 (2000年12月1日発売)
3.54
  • (30)
  • (39)
  • (88)
  • (6)
  • (2)
本棚登録 : 778
感想 : 41
4

本書は社会全般、とりわけ、政治・教育の分野を扱う。本書の原出典は、古いものは第二次大戦中、新しいものでも1995年ごろの著書である。しかし、現在読んでもほとんど古さを感じさせない。というのは、現在の日本の政治の低迷、教育の低迷についての、原因・結果そして処方箋が、ずばり言い当てられているからである。実に40年も50年も前に、ドラッカーに予言されたとおりになっている。ドラッカーの社会に対する洞察の深さに感服させられる。

全ての政治家・官僚・教育者に本書を読んでいただきい。もし読んでいただいていたのであれば、今日の日本の低迷を招かなかったのではないかとさえ感じる。

しかし、本書についての課題もある。これで本書を含めて「はじめて読むドラッカー」シリーズ4冊を読み終えたが、本書が一番難解であった。ほかの3冊は、マネジメント・プロフェッショナル・技術という特定テーマを扱う。しかし本書は、社会という最も抽象的な概念を扱う。難解で理解しがたいのは、そのためではないだろうか?思いのほか、読み切るのに時間を費やしてしまった。★5つつけるべきところを1点減点した。

願わくば、本書を平易に解説した啓発書が必要ではないだろうか?ドラッカーの遺志を継ぐ者が現れるのを期待したい。

<hr>
目次
本書のために書き下ろしたのではなく既出書からの抜粋である。既出書の年号を付記する。

日本の読者へールネッサンスへの期待
はじめに

Part1 激動の転換期にある社会
1章 社会の存在を当然としてはならない(1942-産業人の未来)
2章 経済至上主義は人を幸せにするか(1939-経済人の終わり)
3章 二十世紀の変化の本質は何か(1995-未来への決断)
4章 多元社会における組織の原理(1969-断絶の時代)
5章 起業家社会の到来は何を意味するか(1985-イノベーションと起業家精神)
6章 NPOはなぜ成功したのか(1993-ポスト資本主義社会)

Part2 断絶後の経済
1章 「継続の時代」は終わった(1969)
2章 世界経済の変貌が持つ意味(1986-論文「マネジメント・フロンティア」)

Part3 模索する政治
1章 理性崇拝は何をもたらすか(1942)
2章 改革の原理としての正統保守主義(1942)
3章 社会の問題に唯一の正解はない(1989-新しい現実)
4章 「利害による連合」の終わり(1989)
5章 国民国家から大国家(メガテイスト)へ(1993)
6章 高齢者が政治を動かす(1976)

Par4 問われる知識と教育
1章 知識の政治学(1969)
2章 学校が劇的に変る(1993)
3章 分析から知覚へー二十一世紀の社会と世界観(1989)
付章 もう一人のキルケゴールー人間の実在はいかにして可能か(1992-すでに起こった未来)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年11月5日
読了日 : 2009年11月26日
本棚登録日 : 2018年11月5日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする