泣き虫弱虫諸葛孔明 第壱部 (文春文庫 さ 34-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (2009年10月9日発売)
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感想 : 59

抱腹絶倒三国志!?って聞いたけど、抱腹絶倒はしなかった。
くすっとなったり、にやっとなったりはしたけど。
だいたい、普通の三国志によくある聖人君主然とした劉備がいやだったりする。曹操が悪で、劉備が善で・・・って、そんな単純なわけないやろ。
だから、あの蒼天航路の劉備を見た時は胸がすくようだった。
ひょっとしたら、こっちの方が実像に近いのかも・・・と思ったりした。

そんなわけで、この本に出てくる劉備三兄弟、そして諸葛孔明も、ひょっとしたら、こんなんだったのかも・・・と思わせてくれて、結構、好きだ。(この平和な世の中で、こんな人がそばにいたら、好きと思えるかどうかは置いといて)
無茶苦茶なくせに、なぜか憎めない。
勧善懲悪が大好きな講談とかが作り出したもんを剥ぎ取って、そこにある姿を想像してみるのは、なかなか楽しい。

もともと、三国志って、歴史上の人物に、どんな人だったんやろ、こうだったらいいなぁ、楽しいなぁって思いを(ちょっぴり)足して出来上がったもの。
だから、物語を作る人の思い(やその人の生きた時代の匂い)で、少しずつ、登場人物像も変化する。
こんな呂布がいてもいいんじゃないの、孫策はもっとかっこよかったはずだ、いくらなんでもこの曹操はなしだ・・・。
そして、そういう違いとかブレを楽しんだりもする。

そういう楽しみ方は、再演を繰り返してるお芝居を見る時にも似てるかな。
役者さんが変われば、印象も変わる。
演出家の指示で、衣装やセットが違うだけでも、違う作品になる。
ましてや、脚本家が台本を手直しをしたら、まるで違う世界が見えてきたりする。

お芝居でなくても、物語の脇役があんまり魅力的だから、スピン・オフやら番外編やらができたりする。
同人誌なんかで、物語のキャラがいろんな姿で登場したり、物語を読むだけだった人がいきなりコスプレを始めたりする。
しまいには、なせだか戦艦が女の子になってたりまでする(いや、これは違う。でも、関羽が女の子になったりする)。・・・。
携わる人が増えるたび、物語群のように育っていったりする。

ともあれ、ひとつの物語からブレを作り出して、それを楽しみ、その中で遊ぶのって、意外に普遍的なものなのかも。

要するに、この本は、結構、お気に入りだったりする。

ホウ徳(ホウ統のおじさんらしい)が劉備に、軍司とは、と語るとこなど、なかなかの名場面。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年8月23日
読了日 : 2014年8月23日
本棚登録日 : 2014年8月11日

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