雨はあした晴れるだろう (角川文庫 み 5-20)

著者 :
  • KADOKAWA (2000年10月24日発売)
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本棚登録 : 97
感想 : 17
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三浦綾子さんの初期作品3編を集めた短編集です。
 これらの作品は、三浦綾子記念文学館設立を機に、原稿を整理していたら出てきたものや、不完全なままだったものを東西奔走しながら復元したものであるらしい。特に「茨の陰に」の復元にはかなりの労力をかけたとのこと。
 
 表題作「雨はあした晴れるだろう」は義理の兄に密かに憧れている主人公がある事件をきっかけに彼に失望、同級生の男の子とほのぼのとした関係が始まりそうなところまでを日記形式で書かれている作品。「この重きバトンを」は、主人公が父の半生を知り、父に対する見方が変わるという作品。「茨の陰に」は町長一家を描いた作品。

 初期作品と言うことはたぶんこれらの作品も昭和2じゅうウン年頃に書かれたものだとは思うが、どれも古くささを感じさせません。(「茨の陰に」には「純潔について」などの記述があるのでこれはさすがに時代を感じるが)特に表題作は十代の憧れの気持ちと、間違ったことを許さない気持ち、これらのみずみずしさがどの時代にも通用しそうに思えます。

 初期作品と言うこともあり、三浦作品の原点とも言えるところがあります。「雨はあした晴れるだろう」は「ひつじが丘」や「氷点」、「茨の陰に」は「積木の箱」に通じるところがあるように思います。読み比べするのもいいかも知れませんね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 【文学】小説
感想投稿日 : 2009年7月24日
読了日 : 2011年10月12日
本棚登録日 : 2009年7月24日

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