報道が教えてくれないアメリカ弱者革命 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2010年10月27日発売)
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感想 : 25
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体系だった論文ではなく、ルポであるけれど、余計に現場の臨場感が生々しい。

格差が拡大し、進学や医療の費用が工面できない人々が、次々と国によって使い捨てにされ行く現実。

電子投票機の不正を訴えハンガーストライキをする実業家だった男性。
校内で生徒を米軍がリクルートする活動に異を唱え、学外に追放することに成功した高校生。
イラク戦を進める政権に抗議する為、ブッシュ大統領の牧場周辺で座り込みをする息子を戦場で失った母親たち。

一人ではたいした力を持ちえない弱い市民が、いかにして国の暴走から自分や子供たちの生存権を守ろうとしているかという戦い。

一般市民が政治や社会に無関心でいることが最大の問題なのだ、ということが様々な苦闘の中から浮かび上がってきます。こういう層が、テレビや新聞のプロパガンダを無批判に信じ込んでしまい、暴走する政府を支持してしまう。自らが餌食になるというのに・・・

よその国の出来事なんかぢゃない。
今の日本でも起ころうとしている、もしくは既にじわじわと進行中の事態。
ぼーっとテレビや新聞を眺めているだけの人々に、真実を知ってもらうことが何より大切なんだと思います。

TPPに乗り遅れるなとか、押し付けられた憲法は改正すべしとか、規制緩和構造改革とか、元々普段からあった領海領空侵犯を大きく報道して国防軍化だとか、事故の収束も被害者への補償もできないのに原発を再稼動や輸出とか、内容もろくに知りもしないで言葉の勢いに乗って投票してしまう人々に、どうしたら本当のことを知ってもらえるのか。

参院選が近づくにつれ、焦燥感ばかりがつのります。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2013年5月22日
読了日 : 2013年5月22日
本棚登録日 : 2013年5月15日

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