小説 仮面ライダーブレイド (講談社キャラクター文庫)

  • 講談社 (2013年3月7日発売)
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本棚登録 : 194
感想 : 14

 テレビ本編最終回から300年後の物語。世界中の陸地が海に沈みつつあるディストピアもの。不死身のジョーカーアンデッドであるカリスことハジメと、同じくそれとなったブレイドことケンザキ、そしてタチバナとムツキによく似たタチハラとサツキが仮面ライダーとしてアンデッドと闘う。
 海に沈みつつある世界を旅する豪華客船が一つの社会を形成している。船の運航に役立つわけでもなく、金を持っているわけでもない者が暮らす廃棄エリアに住む孤児のトウゴ少年が主人公。彼と、彼が共存している孤児の集団の人間ドラマを中心とし、そこに仮面ライダー達のドラマが絡んでいく。
 トウゴ達は最初にケンザキと遭遇する。ケンザキは記憶を失った漂流者として船に救助されて彼らの前に登場する。
 廃棄エリアに住むサッカのコジロウが書いたテレビ版仮面ライダー剣とほぼ同じモノガタリを読んだトウゴ少年の前にアンデッドが現れた時、ケンザキは仮面ライダー剣に変身する。何故闘うのか、何故闘えるのかもわからないまま……。
 トウゴとコジロウはモノガタリの登場人物が目の前に現れた興奮と驚きによって、仲間と共にライダーとアンデッドの戦いに巻き込まれていく。
 印象としては〝劇画調〟だと感じた。
 この物語を読んでいる時、脳内で内容がなんとなく劇画チックに再生されたのだ。
 特別そういう風に思ったシーンが、方舟を脱出したトウゴ達のボートからタクホらが波にさらわれたシーン。剣が探すのだがどうしても見つからない、という絶望的なシーンが劇画のように思えた。
 
 ケンザキとハジメがテレビ本編の後に辿った道が明かされているのだが、結末を迎えると、それは一体全体正しい記憶なのか、そしていつの頃のことなのか、と疑わずにはいられない。300年後と言われているけれど、それも特別根拠があるように感じられない。

 個人的には囚人島でのギャレン=タチハラのドラマが好みだった。
 最後の戦いではやっぱり不遇なのだが、個人パートではかなり優遇されている。
 海賊として捕らえられ、囚人として暮らしている時の一場面が印象的だ。他の囚人が朝食のスープをほとんど貰えなかった時にちゃんと配給させるよう看守に立ち向かうなど、なかなかにかっこいい。
 脱獄を試みるも牢名主のような巨漢の闖入で計画が失敗し、仲間を失い巨漢も死に、牢に戻される。
 その後、サヨコによく似ている、タチハラを担当するカウンセラーのサエコに脱獄を手伝ってもらう。更には、サエコの家系が守ってきた秘宝であるギャレンのベルトを渡されるわと、なかなかに王道展開が続く。

 アンデッドがかなりデウス・エクス・マキナ的に使われていた。
 キャラクターがモブによって物語からの退場の危機に晒されるとどこからともなくアンデッドがやってきて、そのモブを殺すという展開が多々見られた。テンポは良いけど、目まぐるしすぎる感じがあった。

 前評判としてホモホモしいと聞いていたが、物語が終わった後のハジメとケンザキの関係を見れば納得せざるを得ない。ロマンチック過ぎるんだよ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ライトノベル
感想投稿日 : 2013年3月27日
読了日 : 2013年3月27日
本棚登録日 : 2013年3月27日

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