“雪沼”というところは実在しない。
作者は、
在りもしない場所で居もしない人々に起こってもいない出来事を、
どこにでも在りそうな場所でどこにでも居そうな人々に誰にでも起こりそうな出来事として、でも、少しだけ特別なことを、
そっと描く……。
だから、
どの短篇をとっても、
「きっと雪沼ではあるんだろうなぁ」と、感じてしまう。
地味で小さなスキー場、小さなボーリング場に小さな料理教室や書道教室、あるじ自身がおいしいことを追求していない食堂。
里山の延長線のような地元の山に囲まれ、だいたいが少し知り合いの住む地域。
「ほんわか」しているわけではない結末の中に占めるものが、一人一人が「生きる」ということの唯一無二を語っているように感じられ、何度も読み返すことになるだろう……。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文芸小説
- 感想投稿日 : 2023年6月5日
- 読了日 : 2023年6月5日
- 本棚登録日 : 2023年4月26日
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