最近SF小説にのめり込みつつあり、そんな中でSF界における重要人物、大森望(本アンソロジーの編者)を知った。また「時間SF」というサブジャンルも奥深くて、この中に更にいくつも細分化されるテーマなので、ここを掘ってみたかった、ということで購入。ちなみに、編者によるあとがきで、このサブジャンルの理解に非常に役立つガイドをしてくれている。
尚、アニメ『リヴィジョンズ』はあくまでこのアンソロジーを編んだきっかけでしかなく、内容は全く関係ない短編の集まりである。
時間SFものは、作品によって「どうやって時空を移動するか」という点が当然ながら物語の軸であり、独自性の発揮ポイントであり、いかに矛盾のない論理構造を組み立てるかが筆者の腕の見せ所だと思っていて、そこを比較しながら読むのもまた面白い。(あえて理屈は説明せず、もひとつの方法としてアリ)
個人的には既読のものはひとつもなく、いずれも面白くて大当たりな一冊。特に法月、藤井あたりは他の作品も読んでみたいなと。
リチャード・R・スミス「退屈の檻」★★★☆☆
法月綸太郎「ノックス・マシン」★★★★★
・最高。ちょいジョークっぽいオチも良い。「ノックスの十戒」を題材にしたタイムトラベルもの。
藤井太洋「ノー・パラドックス」★★★★☆
小林泰三「時空争奪」★★★★☆
C・L・ムーア「ヴィンテージ・シーズン」★★★★★
津原泰水「五色の舟」★★★★★
・奇形の見せ物一家の話。「くだん」という人と牛の合いの子が産まれたと噂を聞く。くだんは昔から過去未来を見通せると信じられている。最後にくだんと対面した時、くだんは並行世界を自由に行き来することができると話す。最後、子供たちは別の世界(原爆が落とされなかった世界)へ行き、生きながらえる。このエグ味が凄味として機能しつつ、ハッピーエンドで終わるという圧巻の短編。
- 感想投稿日 : 2019年3月31日
- 読了日 : 2019年3月31日
- 本棚登録日 : 2019年3月31日
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