_どこから来たかは問題じゃない。大事なのはこれからどこへ行くかだ_
転換期三部部作の第二部。
世界恐慌のあおりで飢えと貧困が蔓延する1932年のベルリン。
カツカツと聞こえてくるナチの足音は大きくなり、やがて傾倒して行く国民たち。それらに翻弄されての、家族や隣人との悲しい分断。
15歳の少年の目から見た激動の数ヶ月が描かれます。
主人公は、第1部 『ベルリン1919 赤い水兵』の主人公ヘレの弟で、赤ん坊だったハンス坊や。
苦悩しつつ踏み出した社会は、きつい労働に加え、非ナチという理由でナチの従業員から不当な暴力を受けたり、想像以上に過酷。
そんな毎日の中で出会う、同じ職場で働く少女、ミーツェ。
彼女もまた、複雑な生い立ちから決して軽くないものを背負っているのに、雪原に咲く花のように強く清らか。出会ってすぐからふたりは惹かれ合います。
次第にヒトラーの独裁を許していくドイツと、それに抗う人たち。
これでもか、これでもか、って次々に切迫した状況に陥るんだけど、ふたりのロマンスと見守る大人たちの優しい目が、読んでいる間ずっと希望の光でした。
生ぬるいハッピーエンドとは違うけど、人間の尊厳とか、我を信じぬくことの意味を深く考えさせられ、非常に勇気の湧く物語でした。
旗を掲げるシーンはこの目で見たかと錯覚するほど入り込んでしまい、目頭も胸も熱くなりました。
これが少年文庫だなんて。こんなの読める中学生がいるの?すごいな。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
YA
- 感想投稿日 : 2021年1月7日
- 読了日 : 2021年1月6日
- 本棚登録日 : 2020年11月25日
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