パンドラの匣

著者 :
  • 2012年9月27日発売
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本棚登録 : 263
感想 : 19
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わりと明るめな題材とはなっているが、本作に収録されている2作目のパンドラの匣は、小説のもととなったのが太宰の読者であった木村庄助という人物の病床日記であり、また小説の内容も恋愛ものではあるが舞台が健康道場という名の結核療養所という暗めな設定である。

結核という重い病に罹ってしまった主人公が、先の見えない人生において恋をして希望を見出していく話。

正義と微笑は、主人公が16~18歳の頃の話で、とにかく主人公があまりに天邪鬼で気に食わなかった。

執筆当時三十代半ばだった太宰。年齢を重ねたことで人生や世間を知ってしまってもなお弟子の弟の日記を元にしてまで純粋な少年像の青春小説を書こうとする彼の苦悩や必死さが伝わってくるようである。

太宰はパンドラの匣以降明るい題材の小説を書かなくなったそうだが、それは彼がこの作品によってパンドラの匣に残っていた希望の部分をこの作品で書ききってしまった、現実にはもう良いことがないということだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2022年2月10日
読了日 : 2022年2月10日
本棚登録日 : 2022年2月10日

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