ギンイロノウタ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2013年12月24日発売)
3.28
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本棚登録 : 1112
感想 : 94
4

 歪な家庭環境で育てられた主人公がその呪縛から逃れるために、いろいろともがく話。短編が二編収められているが、状況設定はとてもよく似ていると感じた。ただ解釈が様々になるように描写されていることも多く、私の読み取り不足によるところもあるかもしれない。
 似ている点としては、主人公は両方とも親から何かを押し付けられるというところが挙げられ、「ひかりのあしおと」では、大人っぽくあることを、「ギンイロノウタ」では臆病であることを押し付けられて、そのせいで孤独を強いられていた。
 大きな違いとして「ひかりのあしおと」では、主人公は自分の家庭や自身についての異常性を認識しており、それ故に普通になることを目指していたり、敢えて親と同じような状況になるようにしたりと親が求めることに反抗しようとしていた。一方、「ギンイロノウタ」では、主人公はずっと自分を守ることに一生懸命で、主人公を守ってくれるものが成長とともにステッキ、ノート、扉、ナイフという風に変化していっているだけだった。その結果、結末や話の向かう先に変化があったのがとても興味深かった。
 個人的には「ギンイロノウタ」の方が「ひかりのあしおと」より複雑でかつ表現も真に迫っていて好みだった。また、「ギンイロノウタ」でステッキをなくしてノートになった後、また自分の中に銀色の魔法を見付けるという流れも人は変わらないことを示しているようで好きだった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年1月13日
読了日 : 2023年1月13日
本棚登録日 : 2023年1月13日

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