ロ-マ帝国衰亡史 (1) (ちくま学芸文庫 キ 2-1)

  • 筑摩書房 (1995年12月7日発売)
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感想 : 22
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 ローマ帝国の発展から滅亡までを綴ったE.ギボンの名作の第1巻。
この本で注目すべきは、「皇帝×軍部×元老院」という3すくみの変化を追う事であろう。教科書だけでの勉強だと皇帝の独裁だとかしか書いていなかったりするから、世界史を大して勉強していない自分にとっては斬新だった。「昭和史 1926-1945」という本で考察されている、太平洋戦争中の日本での「天皇×軍部×内閣」のように様々な裏工作や活動がある。

 この2つで異なっているのは、皇帝と天皇の権威の差である。皇帝の権力は、最初は絶大で元老院・軍部を抑えていたが、途中から軍部を抑えるのが困難になり、皇帝を暗殺して首謀者自らが皇帝となったり、元老院が働きかけて、暴政を行う皇帝への対抗馬を出したり…。一方、太平洋戦争中の日本での軍部・内閣ともに(上であげた本を完全に正しいと仮定して)、天皇を倒すという意識は全くない。

 思うに、天皇・皇帝という地位の意味の違いによるのではないだろうか?
ローマ帝国の皇帝は「誰がなるか」に意味があった。一方、日本の天皇は「地位」に意味があった。
 ローマ帝国皇帝は、誰でもなることが可能であった。実際、最下層民から皇帝に上がりつめることもざらにあったようだ。誰がなるかは、実力が決めると言っても良い。そんな中で、皇帝に求められたものが常に変わっていったのである。ある時は頻繁に領土に侵攻してくる蛮族の退治であったり、またある時は暴政を布く前皇帝であったり。そして、その求められているものを決定したのが、「皇帝×軍部×元老院」の3すくみの中で、その時点で最も強いものだったのだ。すなわち、3すくみの中で最も強い者がその時点で必要とするものを達成するのに最も必要な皇帝を選んだのだ(もちろん一番強いのが皇帝であれば、そのとき最も必要な皇帝は彼自身となる)。
 一方、天皇は近親者による世襲制が前提とされているため、誰がなるかはほとんど決まっていた(正確に言えば、天皇の子として生まれれば、必ず次代天皇候補になる)。そのようなシステムであるから、彼の子供たちは自然と天皇になるべく教育を受ける。さらにそんなシステムを前提とするべしという教育を一般市民は受けているのだから、それを崩そうとする人間はまずいない。
以上から、天皇と皇帝には差ができるのではないか。

ちなみにこの本、10巻まであるらしい。しかも1巻500ページくらいある笑頑張って読もう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史(世界史)
感想投稿日 : 2009年10月26日
読了日 : 2009年10月22日
本棚登録日 : 2009年10月22日

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